Sebastian Schunke(P)
Paquito D'Rivera(Cl)
John Benitez(Ac-B)
Antonio Sanchez(Ds)
Pernell Saturnino(Per)
Anders Nilsson(G)
Rec. 2008?, NY
(Connector 59850)
大好きなアントニオ・サンチェスが参加しているのですぐに飛びついたけど、新譜ではなく2008年のリリースだったんだね。でもAmazonでわずか657円で買えたので、失敗したという気持ちには全くならない。リーダーのセバスチャン・シュンケはこれが初聴き。本人のサイトを見るとドイツ出身で、エディ・パルミエリ、チック・コリア、ゴンサロ・ルバルカバの影響を受けているようだ。そのことや本作のメンバーからもラテンジャズへの傾倒ぶりが窺えるのだが、他の5枚のリーダー作(DVD作品の1枚を含む)もそうなのかは定かでないので、暇なときにでもサイトの試聴用音源を聴いてみるとしよう。他のメンバーはクラリネットで参加しているパキート・デリヴェラ以外は知らない名前だけど、自ブログで検索したらベースのジョン・ベニテズ(?)は「Eddie Palmieri/Listen Here !(05年)」「Conrad Herwig/Sketches of Spain Y Mas(06年)」「Tom Guarna/Out From The Underground(07年)」(各別頁あり)等に、パーカッションのパーネル・サトゥルニーノ(?)は「Edward Simon/Simplicitas(05年)」「D.Liebman,D.Braden,D.Moretti/Latin Genesis(07年)」「David Binney,Edward Simon/Oceanos(07年)」「Donny McCaslin/In Pursuit(08年)」「David Sanchez/Cultural Survival(08年)」「Donny McCaslin/Declaration(09年)」(各別頁あり)や、つい先日聴いたばかりの「Chick Corea / The Vigil(13年、別頁あり)」に参加しているのが見つかったので、ギターのアンダース・ニルソン(?)だけは本当に知らない人だけど、これは相当期待できそうだ。
全7曲がシュンケのオリジナル。
ラテンジャズの要素は強いながらも単にノリのいい演奏をしているのではなく、曲中で緩急の変化を付けながらダイナミックな展開を見せているのが特徴的。シュンケのピアノは上記パルミエリ、コリア、ルバルカバにハンコックも加えて4で割ったような感じだけど、中でもむやみな速弾きはしなくなった近年のルバルカバに近いものがあり、そのラテンタッチながらも深みが感じられるプレイがなんともいい塩梅。そしてそれ以上によく目立っているのがデリヴェラで、GRP時代のエディ・ダニエルスを連想させるようなセンスのいいクラリネットで、まるで彼のリーダー作かと思ってしまうほどの活躍ぶりを見せている。また全曲に参加しているわけではないものの、ニルソンのギターもなかなかの聴きもので、アコギあるいはエレギをナチュラルな音色で弾いているときは無難なプレイをしているけれど、部分的にフリー調となっている4曲目や、静と動の起伏が激しい6曲目ではエフェクターを駆使しながら、マルク・デュクレやベン・モンダーあたりにも通じる先鋭的なプレイで楽しませてくれる。そしてなんといってもサンチェスのドラミングが素晴らしい。どの曲においても繊細さとダイナミズムの入り混じった有機的なプレイをしているおかげで、集中の糸を切らすことなく演奏に引き込ませてくれるね。またデイヴ・ホランド的な芯のガッチリとしたベースで土台を支えているベニテズにも好感が持てるし(彼のおかげでジャズ度も一段と増している)、俺が俺がと前に出てくることのないさっぱりした味付けのサトゥルニーノのパーカッション(曲によってはオーバーダブも施しているよう)も、サンチェスのいい女房役となりながら演奏に活力を与えている。
演奏はどの曲も好感触だし、マイク・マルシアーノ担当の録音(スタジオはSystems Two Studios)もまた文句なしに素晴らしい。Criss Cross盤とは違って各楽器とも非常に鮮度が高い音質で録れていて、それがまたやっている音楽とも絶妙なマッチングを見せているのだがら嬉しくなってしまう。特にピアノとクラリネットの響きの美しさは感動ものだね。これだけの良盤を657円というタダのような値段で入手できたのだから、サンチェスが叩いているとの情報を寄せて下さったブログ仲間のoza。さんには感謝します。
評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)