Orrin Evans /

Orrin Evans(P)
Eric Revis(B)
Donald Edwards(Ds)
Ben Wolfe(B)2,4
Luques Curtis(B)5
Alex Claffy(B)10
Rec. January 29, 2013, NY
(Criss Cross 1359)

近年のオリン・エヴァンスのリーダー作はPosi-Toneからリリース(「Orrin Evans/Faith in Action(10年)」「Orrin Evans / Freedom(11年)」「Orrin Evans / Captain Black Big Band(11年)」「Orrin Evans / Flip The Script(12年)」各別頁あり)されているので、てっきりCriss Crossからは離れてしまったと思っていたけれど、そういうわけでもなかったようだ。本作では「Flip The Script」でも一緒だったベン・ウルフ、ドナルド・エドワーズと共演しているのだが、ベースはブランフォード・マルサリス・カルテットでお馴染みのエリック・レヴィスをメインとして、他にもルケス・カーティス(「Faith in Action」「Captain Black Big Band」に参加)や、新人と思われるアレックス・クラッフィー(?)が参加しているのが興味深い。

エヴァンス曲が2曲、レヴィス曲が1曲、ウルフ曲が1曲、B. McHennyの「African Song」、オーネット・コールマンの「Blues Connotation」、ホーギー・カーマイケルの「Rockin' Chair」、M. Heliasの「Ellipsis」、T. Bashoreの「Ribisconsia」、A. Crouchの「My Tribute」で全10曲。
曲によってはレヴィスの代わりにウルフ、カーティス、クラフィーがベースを弾いているのかと思ったけれど、そうではなくてツイン・ベースのスタイルをとっているが意表を突く。その演奏はフリーもありの4ビートが主体となっているのだが(そういえばレヴィスの「Eric Revis / Parallax(13年、別頁あり)」もフリー指向が強かった)、その中でもオーソドックスな演奏をしている3曲目「Blues Connotation」がセカンドライン的なリズムと楽曲が絶妙にマッチしていて、ノリノリで楽しませてくれる。ツイン・ベースでやっている曲の方はグッとフリー的な要素が強まっているけれど、既成曲が多いことからも分かるように楽曲自体はきちんとしているし、途中からの4ビートにチェンジする場面なんかも滅茶苦茶カッコよくて、これまたいい感じで楽しめる。エヴァンスは曲調に応じていろんな表情を見せながら弾いているけど、ガツンといっているときのハンコック的なモーダルなプレイのカッコよさは当然として、いかにも黒人らしいブルージーなプレイや、バラード曲やフリー的な場面における十分な間合いを取りながらの奏法なんかも単なる手癖には終わっていなくて実にいい。以前からこんな感じで弾いていたとはいえ、その表現力はますます増しているように感じられるね。またレヴィスもアグレッシブなアプローチを見せていながらも、一人浮いてしまうことなく相性バッチリのプレイで聴かせてくれるし、エドワーズも元気溌剌なドラミングで演奏を盛り上げているのが好印象。ただしツイン・ベースの必要性はあまり感じられないかな。どうせやるのならもっと大胆にやってほしかった。それと8曲目から10曲目まで静的な演奏が続いているのも、アルバム構成としては尻すぼみな印象を受ける。さらにはフェードアウトしている曲が数曲あるのも気になる部分だね。
ということで全面的に共感できるといったわけではないのだが、演奏自体はどの曲も悪くはないし、マイケル・マルシアーノ担当の録音も、場面によってはベースの音がドラムスにかき消されているものの、やっている音楽にはよくマッチしているので、それなりにいい感じで楽しむことができた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)