Terence Blanchard / Magnetic

Terence Blanchard(Tp)1-6,8-10
Brice Winston(Ts)1,2,5,6,10
Ravi Coltrane(Ts)3,4
Lionel Loueke(G)4,5,9
Fabian Almazan(P)1-10
Ron Carter(B)1,3
Joshua Crumbly(B)2,4-6,8-10
Kendrick Scott(Ds)1-6,8-10
Rec. 2012?, NY
(Blue Note 90335426)

前作「The Terence Blanchard Group/Choices(09年、別頁あり)」から、テナーをウォルター・スミスIIIから「Terence Blanchard/A Tale of God's Will(07年、別頁あり)」に参加していたブライス・ウィンストンに戻して(2曲にはラヴィ・コルトレーンが参加)、またベースをデリック・ホッジから新人と思われるジョシュア・クランブリー(2曲にはロン・カーターが参加)に代えてのブルーノート復帰作。ジャケ裏の写真が悪魔チックなので、ヒップホップとかの私好みではない方向に行っているのではという悪い予感もするのだが、普段はアコースティック・ジャズに専念しているメンバー揃い(リオーネル・ルエケは別として)なので、もしそうだとしても極端に変なことにはなっていないと思う。

テンレンス・ブランチャード曲が4曲、ウィンストン曲が1曲、ファビアン・アルマザン曲が3曲、クランブリー曲が1曲、ケンドリック・スコット曲が1曲で全10曲。
まずはヒップホップ的なことはやっていないのでホッとする。中には1、4、9曲目のようにバックでシンセ音が鳴っていたり、トランペットにエフェクターやリバーブをかませながらの大掛かりな8、16ビート調の曲もあるけれど、基本的にはアコースティック・ジャズで真っ向勝負しているね。その中でも4ビートのブルース曲の3曲目(ピアノレス)は、カーターの参加がよほど嬉しかったと見えて、ブランチャードが昔に戻ったように張り切ったプレイで楽しませてくれるし、スコットもカーターと共演する機会の多いアル・フォスターを意識しながら叩いているように感じられるのが微笑ましい。またラヴィもクレジットにはテナーとだけしか記されていないけど、いい感じのソプラノで聴かせてくれて、カーターだけはいつもどおりに弾いているものの、もうこの1曲だけでも買ってよかったという気分になってしまった。ルエケ入りの5曲目の出だし部分はビル・フリゼールを連想するようなフリー調の演奏となっているし、続く6曲目はラテンタッチ(出だしのスコットのドラムソロが滅茶苦茶カッコいい)、7曲目はピアノソロだったりして、けっこうバラエティに富んだ内容となっているものの(それでジャケットの写真ということなのかな)、エレクトリック時代を含む60年代のマイルス・サウンドが根底に流れているようなモーダルな曲調を主体としながらきっちりと纏め上げているので、ごった煮に感じることは全くないし、ブランチャードだけではなくメンバー全員が非常にいい仕事をしているおかげで極上の演奏が堪能できる。
ブランチャードのここ何作品かはイマイチ面白みを感じなかったけど、本作は好みのツボにバッチリ嵌っていて最高だね。Frank Wolfという人が担当している録音も上々なので、これはオマケして5つ星にしておこう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)