Craig Taborn Trio / Chants

Craig Taborn(P)
Thomas Morgan(B)
Gerald Cleaver(Ds)
Rec. June 2012, NY
(ECM 2326)

クレイグ・タボーンは「Chris Potter Underground/Follow The Red(07年、別頁あり)」「Chris Potter / The Sirens(13年、別頁あり)」での印象が強いのだが、その他にも「Marty Ehrlich/Line on Love(06年)」「David Binney/Cities and Desire(06年)」「Scott Colley/Architect of the Silent Moment(07年)」「David Binney/Third Occasion(09年)」「Scott Colley / Empire(10年)」「David Binney / Graylen Epicenter(11年)」「Alex Sipiagin / Destinations Unknown(11年)」(各別頁あり)で耳にしていて、どのアルバムでもなかなかのやり手ぶりを見せているので、ECMとしてはソロピアノ作品「Craig Taborn / Avenging Angel(11年)」(当方未購入)に続く第二弾となる本作でのプレイも楽しみ。メンバーがトーマス・モーガンとジェラルド・クリーヴァーの美味しいどころなのでなおさらだね。とはいえ普段は尖ったイメージの強いタボーンなので、必要以上にECM的(というか静的)な演奏にはなっていないことを願っている。

全9曲がタボーンのオリジナル。
どこまでがテーマで、どこからがアドリブなのか分からないような、即興性の強い演奏が中心。中には3、7、8曲目のように、いかにもECMらしい空間を活かしながらの静的な楽曲もあるにしても、活きがよくてリズミカルな演奏もきちんと用意されているので、それなりにいい感じで楽しむことができる。ただしそういう曲はアプローチが似通ってしまっているのが気になるところ。むしろ静的な曲の方に面白みを感じなくもない。できればもっといろんなアイデアを取り入れるなりして、各楽曲にメリハリをつけていればなおよかったと思うのだが、基本的にアルペジオ系の8ビートといった弾まないビート(非4ビート)がメインとなっている中においての即興演奏なので、これ以上はやりようがないのかもしれない。それでも5曲目なんかはリズムがコロコロ変わっていて、かなり面白いことになっているけどね。表面的には即興と思わせておいて、実は緻密な演奏となっているのが素晴らしい。またモーガンとクリーヴァーが、全体的にタボーンのピアノにピタリと寄り添ったプレイをしているのも見事だね。個人的には逆に三者が火花を散らすような戦い的な部分があってもよかったような気がするのだが、この息が合いすぎるほどに合っている演奏を聴いてしまうと、そんなこともどうでもよくなってしまう。アルバムの後半に進むに連れて静的な曲が多くなっているけれど、ドラムソロからスタートするラスト曲は、変拍子も取り入れながらのリズミカルな演奏で締めているので、聴き終わった後味も悪くない。
そんな演奏には概ね共感できるし(不満もあるけれど)、ジェームス・ファーバーの手による録音もまた良好。ECMのファーバー録音としては久しぶりにしっくりくる作品に巡り会えたのだが、実際のところは「Chris Potter / The Sirens」とも音的にはそんなに変わらないであろうことを考えると、単に私がメンバー各人の固有の音を明確にイメージしていないことが功を奏しただけなのかもしれない。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)