Avishai Cohen / Triveni II

Avishai Cohen(Tp)
Omer Avital(B)
Nasheet Waits(Ds)
Rec. December 17-18, 2009, NY
(Anzic Records ANZ0039)

タイトルが「Triveni II」となっているとおり、「Avishai Cohen / Introducing Triveni(10年、別頁あり)」と同日に録音された別曲集。1枚目は同じトランペット・トリオものの「Avishai Cohen/The Trumpet Player(04年、別頁あり)」とはまた一味違った雰囲気で楽しませてくれたので本作にも期待しているのだが、なんで2年も経過してからのリリースなのかは疑問に感じる。もしかするとアヴィシャイ・コーエンのリーダー作としてはこれといったレコーディングをしていなかったので、お手軽にボツ曲で1枚作ってしまったのかな。でも逆にボツにするのはもったいないほどにどの曲もいい出来だったということも考えられるので、その辺は聴いてからのお楽しみということにしておこう。ちなみに本作がリリースされるまでの間にも、アヴィシャイ・コーエンのプレイは「Omer Avital Quintet / Live at Smalls(11年)」「Omer Avital / Free Forever(11年)」「3 Cohens / Family(11年)」「Gregory Tardy / Monuments(11年)」「Third World Love / Songs and Portraits(11年)」「Daniel Freedman / Bamako By Bus(12年)」「Omer Avital / Suite Of The East(12年)」(各別頁あり)でしょっちゅう耳にしていたので、久しくリーダー作がリリースされていないことには気づかなかった。

コーエン曲が4曲と、オーネット・コールマンの「Music News」「Follow The Sound」、ガレスピーの「Woody'n' You」、ミンガスの「Portrait」、ドン・チェリーの「Art Deco」(「Introducing Triveni」のオルタネイト・テイク)、スタンダードの「Willow Weep for Me」で全10曲。
どの曲も非常にレベルの高い演奏で、ボツ曲といった感じは全くしないどころか、アップテンポの曲が多く収録されているおかげで、1枚目よりもこちらの方がよく感じる。特にオリジナルの3曲目までとコールマンの「Music News」をシリアスに演奏した後の、雰囲気をガラリと変えての楽しさが満ち溢れている5曲目「Willow Weep for Me」までの流れが最高だね。おそらく簡単な打ち合わせだけで挑んだセッション感覚でのレコーディングだと思うけど、その自由度の高い演奏は躍動感が漲っていて、聴いているだけでもワクワクしてしまう。尽きることのないフレーズと完璧なリップコントロールを駆使しながら思うがままに吹きまくっているコーエンといい、強靭なベースで土台をがっちりと支えているオマー・アヴィタルといい、オカズを多くしながらコーエンに挑むようなドラミングを見せているナシート・ウェイツといい、各人とも自分の持ち味を存分に発揮していて実にいい塩梅。またオリジナル曲と既成曲とでメリハリをつけた演奏をしているのもグッド。コード楽器レスでありながら、曲調の雰囲気が一本調子にはなっていないおかげで、最後までノリノリで楽しむことができる。というかこのクラスの人たちになると、コード楽器奏者がいなくてもちゃんとコードが聞こえてくるのだからさすがだよね。それでいながら決してコード進行に囚われた音使いはしていないのだから、どれだけ凄いのかということになる。そういうのを度外視したフリー基調のトリオにも魅力を感じるのだが、何度も聴きたいと思うのはやはりコード進行のしっかりした演奏の方。特に本作はテンポやリズム的なこともきちんと考えながらのた曲配列となっているので、なおさらよく感じる。
そんな演奏には何の文句もないし、1枚目と同様にジョー・マルシアーノ担当の録音も、温かさが感じられながらも各楽器がリアルに録れていて申し分なしで、聴き終わった後には「なんで今頃になってのリリースなの?」という疑問も吹き飛んでしまった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)