Kazumi Watanabe / Live at Iridium

Kazumi Watanabe(El-G)
Obed Calvalre(Ds)
Janek Gwizdala(El-B)
Rec. October 15-16, 2011, Live at The Iridium Jazz Club, NYC
(ewe Records EWBS0190)

前作「Kazumi Watanabe / Tricoroll(11年、別頁あり)」はスタジオ・レコーディングだったのだが、本作はそれと同日(2日間)の夜に行われたイリディウムでのライブ盤ということで、ますます熱い演奏が期待できそうだ。興味深いのは「The Sidewinder」「Moment's Notice」以外の曲目をガラリと変えていること。その中にはアマチュアもライブで好んで取り上げるマイルスの「All Blues」やコルトレーンの「Impressions」の他に、渡辺香津美の往年の名曲「Ensyu Tsubame Gaeshi」「Manhattan Flu Dance」「Unicorn」もやっているのが超嬉しい。香津美の「To Chi Ka(80年)」や「MOBO(83年)」は、リリース当時アメリカでも相当人気があったと思われるので、これだけの曲でライブに挑んでいれば、きっとお客さんのウケもバッチリだろう。

上記の曲と、スタンダードの「Cry Me A River」で全8曲。
4ビートが基調となっているので、リチャード・ボナ、オラシオ・エルネグロ・エルナンデスとのエレクトリック・トリオ「Mo' Bop」ほどの派手さはないものの、逆にその渋めの演奏がなかなかいい塩梅。もちろんライブだけあってスタジオ盤の「Tricoroll」よりも、特にオベド・カルヴェールがダイナミックな盛り上がりを見せている。場面によっては3人のタイム感のズレが見受けられるけど、少ない打ち合わせやリハーサルだけでこれだけできれば充分だろう。ただし香津美のギターの音色はナチュラルすぎる気がしないでもない。Mo' Bopトリオのときのように、あるいはマイク・スターンあたりのように、エフェクターを使い分けながらもっとギンギンに攻めた方がハッタリが効いてよかったのではないかな。「Kazumi Watanabe/Jazz Impression(09年、別頁あり)」から原点回帰で、純粋なジャズに再び取り組んでいる香津美ではあるけれど、ロック・ギタリストも真っ青になるほどの派手さも兼ね備えている人なのだから、できればそういう部分も前面に打ち出して欲しかった。ギターの音色を変えることにより、変な手癖的なものも上手くごまかせると思うしね。なんて思いながら聴いていると、最後の方のオリジナル曲3連発ではイメージどおりの音で弾いていて、「そうそう、これこれ」と嬉しくなってしまった。なにもフュージョン曲ばかりではなく、ジャズの曲であってもこれぐらいインパクトのある音で弾いても構わないと思うんだけどね。その方が香津美らしくて私は好きだ。
そんな音色的な不満を除いては文句なし。香津美のカッコよさは当然として、ヤネク・ダウィズダーラのベースもやるときはやるといった感じで、その上手さを見せつけてくれるし、4ビートであっても16ビート系であっても、アイデア豊富なドラミングで有機的なビートを送り続けているカルヴェールも流石としかいいようがない。Mo' Bopトリオと比較すると小ぶりなのは否めないけど、それでもオリジナルの3曲も含めて(というかこの3曲がベスト)ノリノリで楽しむことができた。なお本作は「Tricoroll」と同じBlu-spec CD仕様だけど、その音質に関しては普通のCDと比べてみないことには、私としては分からない。とりあえずライブ盤としては平均的な音で録れているのだが、ドラムスは少々奥に引っ込んでいるので、もう少し前に出した方が各楽器のバランスが良くなるし、迫力も増したのではと思う。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)