Dr. Lonnie Smith / The Healer

Dr. Lonnie Smith(B-3 Or, Vo, Key, El-Per)
Jonathan Kreisberg(G)
Jamire Williams(Ds)
Rec. Tracks 1,2,6, June 22, 211, Live at the Lamantin Jazz Festival, Hungary
Tracks 3,4,5, January 14, 2012, Live at the Jazz Standard, NYC
(Pilgrimage Production PCD001)

前作「Dr. Lonnie Smith/Spiral(10年、別頁あり)」と同一メンバー(ジョナサン・クライスバーグ、ジャマイア・ウィリアムス)による、ハンガリーのジャズフェスとNYのJazz Standardにおけるライブ盤。これまでのPalmettoではなく、Pilgrimage Productionという新興レーベルからのリリース(これが第一弾のよう)なのだが、Jazz Standardのレコーディングとグラフィック・デザインをアルト奏者のイアン・ヘンドリクソン-スミスが、またミックスとアルバム・コメントをクライスバーグが担当しているということは、もしかすると2人のどちらかが絡んだレーベルなのかな。あるいはロニー・スミス本人のレーベルとか。ネットで検索してもこれといった情報が見当たらないが、その辺は枚数が増えていくうちに判明するだろう。

スミス曲が4曲と、ストレイホーンの「Chelsea Bridge」、ハロルド・メイバーンの「Beehive」で全6曲。
「Jean-Pierre」的な1曲目では、クライスバーグのリーダー作かと思ってしまうほどにギターが大フィーチャーされているのだが、それにも増してスミスがインパクトのあるプレイをしているのだから大したもの。その曲調も現代感覚に満ち溢れていて実にいい塩梅だね。2曲目はジャズロック調のブルース。この曲もまたアドリブの一番手はクライスバーグだけど、端正ながらも決して教科書的ではないフレーズが滅茶苦茶カッコいいし、速弾きはしていないものの疾走感がタップリのスミスも、年齢を全く感じさせない若々しいプレイ(イントロ部分でのエレクトリック・パーカッションもグッド)で聴かせてくれる。また派手なフィルインはしていないものの、スピーディーかつパンチの効いたドラミングでじわじわと盛り上げているウィリアムスもさすがだね。3曲目はライブ会場の違いで楽器の音質が若干変わっているけれど、それでも音場的な統一感はよく取れていると思う。この曲もまたジャズロック調の変則ブルースでノリノリに楽しませてくれるのだが、演奏自体はハンガリーのフェスほど長くはなく、簡潔に終わっているのが少々もの足りない。4曲目はバラードの「Chelsea Bridge」。各人とも曲調にバッチリ合ったプレイをしているのだが、ウィリアムスが右手だけブラシではなく、あえてスティックでライドシンバルを刻んでいるのは、この遅さでもテンポがずれてしまわないようにという配慮だろう。スミスがベースラインを刻んでいるとはいえ、オルガントリオの場合はこういう心づかいがドラマーにとっては必要となってくる。5曲目「Beehive」は思いっきりのロック調。前作「Spiral」でもやっていた曲だけど、ライブということも相まって、ますます過激な演奏になっているね。約11分と聴き応えもタップリなのだが、それにしてもこのプログレッシブな楽曲を以前どのアルバムで聴いたことがあるのか、テーマはよく知っているのにいまだに思い出せないのがもどかしい。6曲目はスミスのコーラス入りのロック調のバラード。クライスバーグのチョーキングしながらの泣きのギターがなんともたまらないのだが、途中からの盛り上がり方も尋常ではなくて、ラストを飾るのにふさわしい1曲に仕上がっている。終わると見せかけてゴスペル調の2ビートに突入しているのもグッドだね。
演奏はとにかく楽しいし、2ヶ所のライブを収録しているわりには録音も良好で、聴き終わった後には大きな満足感が得られた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)