Donald Vega(P, Rhodes)
Christian McBride(B)
Lewis Nash(Ds)
Anthony Wilson(G)
Christian Howes(Vln)
Bob Sheppard(Ts, Ss)
Gilbert Castellanos(Tp)
Bob McChesney(Tb)
Rec. February 2012, CA
(Resonance Records RCD1019)
クリスチャン・マクブライド、ルイス・ナッシュ、アンソニー・ウィルソン買い。ドナルド・ヴェガはこれが初聴きと思っていたら、「Bennie Wallace/Disorder At The Border(06年、別頁あり)」に参加しているのが見つかった。本人のサイトによるとヴェガはニカラグア共和国出身で、14歳のときにアメリカに移住したよう。リーダー作は「Donald Vega / Tomorrows(08年)」に続き、本作が2枚目。1999年の「Anthony Wilson / Adult Themes」が初レコーディングなことからして、年齢は40歳前後といったところかな。ジャケ写からも分かるとおり、若手というわけではなさそうだ。他のメンバーのクリスチャン・ハウズはジャズ、フュージョン、ロックと幅広い活動をしていて、「Bill Evans/The Other Side of Something(08年)」「Bona/The Ten Shades of Blues(10年)」「Linda Oh / Initial Here(12年)」(各別頁あり)に参加している他に、リーダー作も「 Christian Howes / Heartfelt(08年)」「Christian Howes with Robben Ford / Out Of The Blue(10年) 」「Christian Howes, Richard Galliano / Southern Exposure(12年) 」がリースされている。ボブ・シェパードは「The Lounge Art Ensemble/Music for Moderns(05年、別頁あり)」やリーダー作「Bob Sheppard / Close Your Eyes(11年、別頁あり)」が最高だったし、つい先日も「The Joe La Barbera Quintet / Silver Streams(12年、別頁あり)」で聴いたばかり。ギルバート・カステラノス(?)とボブ・マクチェスニー(?)は知らない人だけど、いちいち調べるのも大変なので割愛する。
ヴェガ曲が4曲と、ロン・カーターの「First Trip」、モンティ・アレキサンダーの「River」「Accompong」、ペデルセンの「Future Child」、小曽根真の「You Never Tell Me Anything」、ゴルソンの「I Remember Clifford」他で全12曲。
3管入りの曲はハードバップ基調だし、ギター入りの曲はクーンスらしいカラッとしたサウンドだし、バイオリン入りの曲はデイヴ・グルーシンがジャズをやっているときのイメージに近かったりして(他にピアノトリオのみの曲やソロ曲もあり)、曲調の雰囲気がそれぞれ異なっているのが気になるところ。でもそのおかげでトータル72分の長丁場をそんなに退屈することなく楽しめるわけだし、リズム隊をマクブライドとナッシュで固定していて統一感はそれなりに取れているので、これでよしとしておこう。ヴェガはいろんなピアニストのいいとこどりといった感じ。曲調に応じて表情を変えながら弾いているけど、基本的には綺麗な弾き方を好んでいるようで、モーダルな方向にはほとんど行っていないのはいささかもの足りない。この辺は一昨日聴いたミシャ・シガノフの方がプレイ的に面白かった。その代わりにどんな曲を弾いていても不安定な要素は一切感じられない、流暢なプレイが聴きものだけどね。そんな意味ではオスカー・ピーターソンあたりに近いものがある。これでマクブライドとナッシュがもっと活躍していればトリオとしての魅力はさらに増すと思うのだが、2人ともほとんどバッキングに徹しているだけなので(何曲かではソロもとっているが)、できれば彼らの持ち味をきちんと活かした演奏も聴いてみたかった。でも3管入りの1曲目に関しては、ナッシュのドラムスがパワフルに録れていてやけに良く感じる。この音質で統一していれば他の曲も聴き応えがあっただろうに、エンジニアは肌触りの良さを選んでいて、マクブライドのベースにしても、彼らしいごつい音で録れていないのが残念。とはいえヴェガのピアノとバランスを取るためには、これぐらいがちょうどいいのかもね。そんなトリオを核としながら、曲により他のメンバーも参加しているけれど、こちらの方は各人とも自分の仕事をきちんとこなしているので特に問題はなし。中でもハウズのバイオリンがいいアクセントとなっている。
さすがにこのメンバーだけあって演奏自体は素敵なのだが、綺麗に、あるいは心地よい音質で聴かせようとする西海岸にありがちなミキシングがイマイチなので、星一つ減らしておこう。
評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)