Jacky Terrasson / Gouache

Jacky Terrasson(P, Rhodes)
Burniss Earl Travis II(Ac-B, El-B)
Justin Faulkner(Ds, Per)
Minino Garay(Per)
Cecile McLorin Salvant(Vo)
Michel Portal(B-Cl)
Stephane Belmondo(Flh, Tp)
Rec. May 10-18, 2012, France
(Universal-Emarcy 3711806)

大好きなジャッキー・テラソンだけど、前作「Jacky Terrasson/Push(10年、別頁あり)」でBlue NoteからConcordに移籍したと思ったら、今度はEmarcyへとまたレーベルが変わったんだね。本作では「Branford Marsalis Quartet / Four MFs Playin' Tunes(12年、別頁あり)」に参加していたジャスティン・フォークナーをさっそく起用しているのと、ベースがウッドとエレベの両刀使いなのに加えて、ゲストとしてミッシェル・ポルタルまでもが参加しているのだから、いったいどんなことになっているのかワクワクする。ただしヴォーカリストのセシル・マクロリン・サルヴァント(23歳、本人のサイトあり)もいるので、その辺でどう出てくるのかは気になるところだけどね。テラソンのヴォーカル絡みのアルバムでは「Jacky Terrasson & Cassandra Wilson / Rendezvous(97年)」が最高だったので、そのイメージを崩してもらいたくない。これが初聴きのベーシスト、バーニス・アール・トラヴィス(?、23~24歳)は、テラソン・トリオの昨年の来日メンバー(ドラムスはジャマイア・ウィリアムス)だったよう。経歴等はたまたま見つけたサイトに詳しく書かれているので、後でちゃんと目を通しておく。またパーカッションのミニノ・ガライ(?)とトランペットのステファン・ベルモンドも知らない人だけど、ガライは「Christophe Wallemme/Time Zone(05年、別頁あり)」「Jean-Pierre Como/L'ame Soeur(06年、別頁あり)」に、ベルモンドは「Avishai Cohen/Aurora(09年、別頁あり)」「Keith Brown / Sweet & Lovely(11年、別頁あり)」に参加しているのが自ブログで見つかった。

テラソン曲が4曲と、ジャスティン・ビーバーの「Baby」、ジョン・レノンの「Oh My Love」、超有名曲の「C'est si bon」等のポピュラー曲が5曲、ロリンズの「Valse Hot」で全10曲。
1曲目はメカニカルなアルペジオ部分とラテンタッチな部分の対比が面白い。ゴンサロ・ルカルカバやミッシェル・カミロあたりを連想するような演奏をしているテラソンというのも珍しい気がするのだが、元来がリズム感に非常に優れている人なので、こういう演奏をしたとしても不思議ではないだろう。アドリブこそは少ないものの、ポルタルのバスクラがエフェクト的な効果を発揮しているし、リズム隊の3人のバッキングもカッコいい。ベルモンドのアドリブだけは、なんか自信なさそうでイマイチだけどね。2曲目「Baby」はアップテンポの4ビート。テラソンと3人のリズム隊(フォークナーはブラシを使用)によるスピード感のある演奏が楽しめる。と思いきや、途中からはコロリと変わってまたラテン調になり、テラソンはピアノでバッキングしながらエレピも弾いている。この部分も決して悪くはないけれど、曲調の大きな変化には違和感を感じるので、できれば4ビートだけで押し通して欲しかった。3曲目はサルヴァントをフィーチャーした、これまたラテンタッチなバラード曲。なんか本作はラテンのリズムがテーマとなっているような感じだね。サルヴァントのヴォーカルは、どちらかというと白人的なサラリとしたタイプで、部分的な細かいビブラート以外は歌い方に変な癖がないので、比較的スムーズに耳に入ってくる。そのしっとりとしていながらも、ダイナミクスも兼ね備えた歌唱法が曲調にもよくマッチしている。4曲目はミディアムテンポの4ビート。ベースとドラムスを出しゃばらないようなバッキングに徹しさせながら、テラソンがアコピとエレピを交互に弾いてみたり、ピアノの弦をミュートしながらゴツゴツした音で弾いてみたりと、一人舞台を繰り広げているのが微笑ましい。場面によっては少々散漫な気がしないでもないけれど、こういうユニークな演奏というのもそうそう聴けるものではない。5曲目はゴスペル、ラテン、ファンクをミックスさせたような変拍子曲。1曲目ではイマイチだったベルモンドがメリハリの効いたプレイで聴かせてくれるし、続くテラソンのエレピに座り変えたアドリブも遊び心がタップリなのが実にいいし、最後の方ではフォークナーとガライのちょっとしたドラムス&パーカッション合戦も楽しめる。6曲目「Oh My Love」は、ピアノとベースをバックにサルヴァントがしっとりと歌い上げている。でもこちらの方は甘えたような声質がどうも好きになれない。もうそればかりが気になってしまい、素直に演奏に入り込むことができないね。7曲目は6曲目と曲調がよく似た抒情的な感じの16ビートのバラード曲。この曲だけロー・チューニングのスネアを使ったりして、より曲調にマッチしたサウンド作りをしているのが好ましいし、テラソンとリズム隊の3人だけの演奏に途中からはベルモンドも加わって、後半に進むにつれて大きな盛り上がりを見せているのもまたいいね。8曲目はピアノトリオによる、リリカルな雰囲気を醸し出しながらのダイナミックな演奏が最高にカッコいい。テラソンは当然として、こういうピエラヌンツィ的な曲調のものまで難なくこなしてしまうトラヴィスとフォークナーの対応力たるや相当なものだね。トラヴィスのベースはウッド、エレベ共に、どの曲においても非常に存在感があるし、フォークナーもまたドラミング自体がブランフォードのバンドのときとは異なっていて、ジェフ・ワッツ臭は一切感じられないのだから、どれだけ多くの引き出しを持っているのかということになる。9曲目「Valse Hot」は同じトリオでも、ドラムスが抜けてパーカッションが加わった編成による4ビート(3拍子)。ここにきて初めてトラヴィスがウッドでソロを取っているけれど、やっぱり上手いし、黒人的な力感も申し分がない。またガライもテラソンとの4バースで、カホンか何かを叩きながらいい感じのソロで聴かせてくれる。10曲目「C'est si bon」も同じくパーカッション入りのトリオだけど、こちらの方はフォークナーが担当。5拍子の洒落たアレンジによるラテンタッチな演奏が楽しげだ。
テラソンのアルバムとしては異色な感じがするし、部分的にはこれはちょっとという展開もあるにしても、メンバーの人選がいいこともあって(中でも幅広い音楽性を持っている若手のトラヴィスとフォークナーの起用は大正解)、最後までノリノリで楽しむことができた。ポルタルは1曲目にしか参加していないので、もう1曲ぐらいはあってもよさそうな気はしたけどね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)