matteo Sabattini MSNYQ / Metamorpho

Matteo Sabattini(As)
Mike Moreno(G)
Aaron Parks(P)
Matt Clohesy(B)
Obed Calvaire(Ds)
Chris Potter(Ts)4
Rec. 2012?, NY
(Fresh Sound New Talent FSNT401)

前作「Matteo Sabattini MSNYQ / Dawning(10年、別頁あり)」から引き続きのマイク・モレノ、マット・クローシー、オベド・カルヴェールに加えて、今回はピアノがアーロン・パークスだし、ゲストでクリス・ポッターも1曲だけだが参加しているのだからそそられる。逆にリーダーのマッティオ・サバティーニ(イタリア出身)が、これだけのやり手揃いのメンバーにどれだけ太刀打ちできているかは気になるところだけどね。アルバムのジャケ写もなんとなく影が薄いように感じられるのだが、生き馬の目を抜くNYで10年間も頑張っているわけなので、他のコンテンポラリーなアルト奏者にも負けない素晴らしいプレイを期待している。それにしてもいつのレコーディングなのか、録音年月日が明記されていないのが、FSNTにしては珍しい。お気に入りのミュージシャンが参加しているアルバムの時系列はきちんと把握しておきたいので、こういうのはちゃんとして欲しいものだね。

サバティーニ曲が9曲と、「Body & Soul」で全10曲。
いかにもコンテンポラリー・ジャズといった感じの非4ビート曲を中心に、3曲目では純粋な4ビートもやっている。非4ビート曲には変拍子が多いわりにはすんなりと身体に入ってくるのは、トリッキーな要素を少なくしているから。またコード進行が比較的ハッキリしているのも聴きやすさに繋がっている。それはそれでとてもいいことなのだが、ミディアムテンポ以下の穏やかな曲調のものが多いので、曲中でダイナミックな展開を見せている曲は何曲かあるにしても、もっとアップテンポで活きのいい演奏があってもよかったような気がする。特に5曲目以降は曲の出だしが似通っていたして、聴いているうちに次第に退屈してくるね。サバティーニのアルトはアグレッシブにガンガン攻めまくるというよりも、一音一音を大事にしながらメロディーを綺麗に聴かせるタイプなので(コンテンポラリーなジャズをやっているわりにはアルトの奏法は意外と保守的で、吹き方としてはナベサダあたりによく似ている)、もしかするとガツンとくるような曲は基本的に好まないのかもしれない。そうなるとカルヴェールのドラミングにもあまり期待できなくなってしまうのだが、ダイナミックな場面では当然ながらパンチの効いたプレイで楽しませてくれるし、他の場面においてもスネアの響きを変えてみたり、人力リバーブしてみたりの繊細さを兼ね備えたドラミングが非常に魅力的。またモレノとパークスも元来がこういう曲調と相性がいいこともあり、いい意味でそつのないプレイが堪能できるし(パークスの出番は思ったほど多くはないが)、10曲目のソロ以外はバッキングに徹しているだけだが、クローシーのベースも相変わらずセンスがいい。それに加えてポッター入りの4曲目での、ポッターの活躍ぶりも期待どおり。とはいえ彼の参加によって、アドリブ合戦の部分では逆にサバティーニがくすんでしまっているのは気の毒だけどね。
本作の前半は起伏のある演奏で、それなりにいい感じで楽しめるのだが、グッと落ち着きを増した後半の方はサウンドが一本調子になってしまっているような印象を受ける。各人のプレイ自体はどの曲も悪くはないので4つ星にしたいところだが、アルバムとしての構成力がイマイチなので、ここは3つ星に抑えておこう。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)