Béla Fleck and the Marcus Roberts Trio / Across the Imaginary Divide

Béla Fleck(Banjo)
Marcus Roberts(P)
Rodney Jordan(B)
Jason Marsalis(Ds)
Rec. December 2011, Florida
(Rounder 11661-9142)

ベラ・フレックがジャズメンと共演しているのは、これまでも「Bill Evans/Soul Grass(05年)」「Chick Corea,Bela Freck/The Enchantment(07年)」「Bill Evans/The Other Side of Something(08年)」「McCoy Tyner/Guitars(09年)」「Julian Lage/Sounding Point(09年)」「Brian Bromberg / Compared To That(12年)」(各別頁あり)で耳にしているのだが、どれもがバンジョーという楽器の概念を覆すほどの驚異的なプレイで、本人のリーダー作はまだ聴いたことがないものの、大いに気に入っている。本作もまたマーカス・ロバーツとの共演ということで、はたしてどんなことになっているのか楽しみだね。ロバーツ・トリオを聴くのは「Marcus Roberts Trio/New Orleans Meets Harlem Vol.1(10年、別頁あり)」以来だけど、その間にベースがローランド・ゲリンからロドニー・ジョーダンに代わっているので、その辺でサウンドがどのように変化しているのかも興味深いところ。ジョーダンはこれが初聴きだが、ロバーツのサイトに彼の経歴が書かれてあるので、後でちゃんと目を通しておくとしよう。

フレック曲が5曲、ロバーツ曲が6曲、二人の共作が1曲で全12曲。
本格的なジャズとブルーグラス的な要素が絶妙にマッチしていて実にいい塩梅。バンジョーが入るとどうしてもニューオリンズ・ジャズ的なものを想像してしまいがちなのだが、ジェイソン・マルサリスが参加している関係もあって、確かにそういう部分も加味されているとはいえ、演奏自体はもっとモダンなので、懐古趣味に捕らわれることなく楽しむことができる。ディキシーランド・ジャズでは単なる伴奏楽器だったバンジョーだけど、ブルーグラスではバイオリンと共に演奏の主役だったわけで、その奏法をジャズに上手くフィードバックさせているフレックのプレイがなんといっても聴きもの。また彼との共演ということでブルース臭のような黒っぽさを意識的に少なくして、軽やかなピアノを弾いているロバーツもさすがだね。これまではウィントンと同様にジャズの伝統を重んじるイメージが強かったのだが、ベルリン・フィルとの共演後は、何か一皮むけたような感じがする。この二人が調和をとりながら演奏が進行していくのだが、そんな中ジョーダンの芯のガッチリしたベースにも非常に好感が持てるし、ジェイソンのさりげない上手さもきらりと光っている。
そんな4人のプレイには大きな不満はないものの、演奏が全体的にサラッとしているので、聴いているうちにちょっと退屈してくるね。バンジョーの特性にバランスをとるにはこれぐらいで限界なのかもしれないが、もう少しガツンとくるものが欲しかった。でもピアノトリオにバンジョーが違和感なく溶け込みながらの、独特な雰囲気を持った演奏というのも他のアルバムではなかなか味わえないので、これでよしとしておこう。録音もベース以外は音の線が細めだけど悪くはない。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)