JD Allen Trio / The Matador and the Bull

JD Allen(Ts)
Gregg August(B)
Rudy Royston(Ds)
Rec. February 20, 2012, NJ
(Savant Records SCD2121)

「JD Allen Trio / Victory!(11年、別頁あり)」で打ち止めかと思っていたJ.D.アレンの同一メンバー(グレッグ・オーガスト、ルディ・ロイストン)によるサックストリオ作品がまたまたリリース。本作でもう4枚目なので、これだけ続くと普通のミュージシャンであればネタが尽きてしまうと思うのだが、アレンにしてみると逆にいろんなアイデアが湧き出ているということなのだろう。今回はアルバムタイトルからして、スペイン的な要素が加わっているような感じ。また曲タイトルの中には「Santa Maria」(ブラジルの都市名のことかな?)というのも見受けられるので、スペインのみならずラテン的なものを前面に打ち出しているということなのかもしれない。となるとドラマーのリズム的なセンスが重要となってくるのだが、ロイストンはどんなリズムやビートであってもどんとこいの人なので、その点に関しては何も問題がない。

全12曲がアレンのオリジナル。
スパニッシュやラテン的なものを取り入れているのではという予想に反して、即興性の強い4ビート演奏が展開されている。おそらく「The Matador and The Bull」とかのタイトルは、単にそういうイメージを抱きながら曲を作った、あるいは演奏してみたというだけのものだろう。結局はこれまでと同じような演奏をしているのだが、それでもマンネリには感じないどころか、どの曲にもググッと引き込まれてしまうのは、3人が気合の入ったプレイをしているからに他ならない。特にロイストンは、前三作同様にアレンとの主従関係が逆転しているのではと思ってしまうほどのアグレッシブなドラミングで容赦なくいっているね。コード楽器レスなので聴く人を選んでしまうかもしれないけれど、その割にはアレンが細かいフレーズで攻めることもなく意外と大らかに吹いているので、見掛け上のサウンドはスマートに感じるのが本トリオの面白いところ。そんな中でのボトムをガッチリとキープしているオーガストの骨太なベースもなかなかの聴きものだ。5曲目「Cathedral」で「闘牛士のマンボ」的なフレーズがちょっとだけ登場するけれど、そういうのはその部分だけで、全体的にはコルトレーン・カルテットを連想するような精神性が脈々と波打っている。
例によってトータル40分という短さだけど、どの曲も演奏が濃厚なので、これ以上長いとくどく感じてしまうだろう。動と静のバランスが上々なのに加えて、録音もまた素晴らしくて、耳当たりのいい丸みを帯びたテナーに、芯のガッチリとしたベースとパワー感のあるドラムスが最高のマッチングを見せている。エンジニアはTom Tedescoという人だけど、もうこのジャズ臭たっぷりの音を聴いているだけでも満足してしまう。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)