Pat Metheny / Unity Band

Pat Metheny(El-G, Ac-G, G-Synth, Orchestronics)
Chris Potter(Ts, B-Cl, Ss)
Ben Williams(B)
Antnio Sanchez(Ds)
Rec. February 2012, NY
(Nonesuch Records 7559-79615)

パット・メセニーとマイケル・ブレッカーの初共演盤「Pat Metheny / 80/81(80年)」に、リリース当時は狂喜したものだが、本作にもまた現代最高峰のテナー奏者クリス・ポッターが参加しているのだから非常にそそられる。おそらくメセニーとポッターのどちらとも多く共演しているアントニオ・サンチェスが間を取り持ったのだと思うけど、このメンバーだったらベースはスコット・コリー、あるいは「Pat Metheny,C.McBride,A.Sanchez/Day Trip(08年、別頁あり)」「Metheny,McBride,Sanchez/Tokyo Day Trip Live EP(08年、別頁あり)」に参加していたクリスチャン・マクブライドといきたいところを、あえて若手で売れっ子のベン・ウィリアムスを起用しているのが興味深い。ウィリアムスは初リーダー作「Ben Williams / State of Art(11年、別頁あり)」こそはいまいちピンとこなかったものの、サイドマンとしてはどのアルバムでも素晴らしい仕事をしているので、本作でのプレイも楽しみにしている。
メセニーは近年「Pat Metheny/Orchestrion(10年、別頁あり)」「Pat Metheny / What's It All About(11年、別頁あり)」といったソロアルバムが続いていたけれど、きっとその反動もあってバンドでやりたいという思いが強く沸き上がったのだろう。アルバムタイトルからして「Unity Band」となっていることからも、本バンドに対する意気込みが窺える。

全9曲がメセニーのオリジナル。
1曲目はアコギのクラシカルなソロからスタートするので、ソロアルバムの延長かと思ってしまうような部分もあるのだが、全体演奏に入った途端に活気づくので、そんなことはどうでもよくなってしまう。いかにもメセニーらしいコード進行の曲調の中、アドリブに入ってからもアコギで切実に歌い上げているのだが、素晴らしいのはその後のポッターで、曲調にバッチリ嵌っていながらもこれぞポッターといった感じのアグレッシブな展開を早くも見せているのだから嬉しくなってしまう。またウィリアムスのベースソロもよく歌っているし、リズム隊としてのサンチェスとの相性も悪くない。2曲目はギターシンセを用いたハードな曲。メロディーにはメセニーらしい抒情性が満ち溢れているものの、サンチェスのドラミングが非常に躍動的でパンチも効いているおかげで、ダイナミックな1曲に仕上がっているね。この曲では久しぶりにぶち切れる一歩手前までいっているイケイケなメセニーのプレイが聴きものだし、ポッターのソプラノも曲調によくマッチしていて素晴らしい。3曲目の出だしは、琴的な音がするギター(ピカソギターかな?)とポッターのバスクラの音色的調和がなんともいい塩梅。またテーマに入ってからのエレギとテナーのユニゾンもなかなかいい感じなのだが、この部分でもバスクラが聴こえるということはオーバーダブ(サンプリング?)を施しているのだろう。メセニーのアドリブはいい意味で手癖をふんだんに盛り込んでいるのが嬉しいし、コルトレーンやブレッカー的なものを基調としながらも、それを上回っているのではと思わせるようなフレーズを生き生きと吹いているポッターもさすがとしかいいようがないし、ウィリアムスのソロがメロディアスなのに加えてリズミカルなのにも感心する。また終始有機的なビートを送り続けているサンチェスも、いつものことながら素晴らしい。4曲目はアコギのソロからスタートするバラード的な曲。アドリブをとるのはメセニーだけにして、しっとりと聴かせてくれるのがいい感じだね。5曲目は過去のアルバムでも聴いたことがあるような感じの曲調なので、メセニーが本領を存分に発揮しているのは当然として、その曲調を完全に自分のものにしながらダイナミックに吹きまくっているポッターには、それ以上の凄さを感じる。6曲目は4ビート基調の3拍子。ちょうど4ビートも聴いてみたいと思っていたので、この曲で願いがかなっているのがまず嬉しいのだが、その演奏も期待を裏切らない素晴らしさで聴き惚れてしまう。7曲目の出だしはフリーをやっているのが意表を突く。しかもOrchestronicsまで用いているのだから、ノンテンポの部分をいったいどのようにプログラミングしているのだろうと驚いてしまう。途中からはインテンポで、Orchestronicsはリズムマシン的な使い方になっているけれど、人間と機械が一体となりながら徐々に盛り上がっていき、そこからまたデクレシェンドしていく劇的な曲構成がなんともたまらない。8曲目はWRの「A Remark You Made(お前のしるし)」を連想するバラード。この曲もまた大きく盛り上がっているのはポッター効果があってのことだろう。9曲目はガツンとくるアップテンポの曲で締め。メセニーやポッターはもちろんだけど、それ以上にサンチェスが張り切って叩きまくっているね。当然ながらドラムソロも披露している。
それにしても凄いバンドが登場したものだよなぁ。もうこの演奏には完全にノックアウトされてしまった。さすがにジェームス・ファーバーだけあって録音も上々。文句なしの5つ星だし、今年の私的ベストテンの上位になるのも確実だろう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)