John Abercrombie Quartet / Within A Song

John Abercrombie(G)
Joe Lovano(Ts)
Drew Gress(B)
Joey Baron(Ds)
Rec. September 2011, NY
(ECM 2254)

近年はやっている音楽が年相応に丸くなってしまった感のあるジョン・アバークロンビーだけど、本作ではジョー・ロヴァーノと共演しているので楽しみ。少なくともバイオリンのマーク・フェルドマンとの共演盤「John Abercrombie/Cat'n' Mouse(02年)」「同/Class Trip(04年)」「同/The Third Quartet(07年、別頁あり)」「John Abercrombie Quartet/Wait Till You See Her(09年、別頁あり)」よりはハードな演奏が展開されているのではないかな。わたし的には70~80年代のジョンアバが大好きなので、できればまたそういう演奏をして欲しいと願っている。それでこそ上記アルバムから連続参加のジョーイ・バロンもますます本領を発揮できるだろうし、前任のマーク・ジョンソンやトーマス・モーガンとは少々タイプの異なるドリュー・グレス(ジョンアバとは近作の「Marc Copland/Another Place(08年、別頁あり)」「John Surman/Brewster's Rooster(09年、別頁あり)」「Contact/5 On One(10年、別頁あり)」でも共演している)の骨太なベースも活きてくると思うのだが、逆に言うとそういう演奏でなければわざわざこのメンバーでやる必要もないだろう。

ジョンアバ曲が3曲(うち1曲はスタンダードの「Without a Song」との合体曲)と、マイルスの「Flamenco Sketches」、オーネットの「Blues Connotation」、コルトレーンの「Wise One」、エヴァンスの「Interplay」他で全9曲。
1曲目の「Wher Are You」が夜のイメージが強いバラード演奏だったりして、望んでいたものとはだいぶ異なる。これだけのメンバーなので演奏自体は決して悪くはないのだが、やっぱり最初からガツンときてもらわないことには調子が狂ってしまうんだよね。それはオリジナルの2曲目も同様で、落ち着いた演奏には拍子抜けしてしまう。これよりだったらフェルドマンとの共演盤の4枚の方がまだマシだったような気がするけれど、考えてみるとロヴァーノもジョンスコ・バンドを離れてからは落ち着いた傾向が見られるようになってきているので(自分のバンドではツインドラムスでやっているにしても)、そもそもハードな演奏を期待したこと自体が間違っていたのかもしれない。なんて思いながら聴いていると、3曲目にしてようやくノリのいいテンポの曲が登場。その割には演奏の肌触りがソフトな気もするけれど、やはり最低でもこれぐらいのことをやってもらわないと意味がないんだよね。でも4曲目「Flamenco Sketches」も曲調的には面白いとしてもまたバラードだし、続く曲もどれもがみんなそういう感じで(6曲目のオーネットの「Blues Connotation」でさえ思ったほどはガツンとこない)、結局本作はバラード集的なアルバムだったことに気がついた。ECMのレーベル・カラーとしてはこれでいいのかもしれないけれど、同じECMのジョンアバのリーダー作としては以前にも書いているように、ディジョネット参加の「Timeless(74年)」「Gateway(75年)」「Gateway2(77年)」「Night(84年)」や、アースキン参加の「Current Events(86年)」「Getting There(88年)」「John Abercrombie/Marc Johnson/Peter Erskine(89年)」が個人的には最高だと思っているだけに、本作のような大人しい曲ばかりが続いているアルバム作りには納得しかねる。もちろんどの曲でもメンバー各人が曲調の範囲内では最良のプレイをしているので、演奏的にはこれでも充分だろうけどね。でも一番威勢のいい3曲目「Within A Song」をアルバムタイトルにしているのもなんか変。むしろ最初から「Ballad」と謳っていた方が、そういう心づもりで聴けていたと思う。
ということで演奏に関しては問題ないとしても、想像していたのとは真逆のバラード集なので、そういうのを基本的には好まない私としてはいい感じでは楽しめなかった。録音もロヴァーノのテナーが、ちょっとだけ硬質に感じられる部分があるのが気になる。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)