Fly / Year Of The Snake

Mark Turner(Ts)
Larry Grenadier(B)
Jeff Ballard(Ds)
Rec. January 2011, NY
(ECM 2235)

「Fly/Sky & Country(09年、別頁あり)」に次ぐFlyの3枚目(ECMでは2枚目)。サックストリオとしては先日聴いたばかりの「Steve Lehman Trio / Dialect Fluorescent(別頁あり)」が非常に動的で私好みだったのだが、こちらFlyの方も前作はECMからのリリースにしては思っていた以上に動的だったりして、同じくマーク・ターナーが参加している「Billy Hart / All Our Reasons(12年、別頁あり)」が意図的にECMカラーを打ち出していたのと比べるとはるかにいい印象だった。なので本作にも期待しているのだが、サックストリオで長く続けていくのには限界があると思うので、どうせだったら同じリズム隊のラリー・グレナディア、ジェフ・バラードとトリオを結成しているブラッド・メルドーも加えて、カルテット編成にしてしまった方がよかったような気もする。ターナーとメルドーは過去にも「Mark Turner Quintet/Yam Yam(95年)」や「M.T.B/Consenting Adults(95年?)」で共演しているし、メルドー参加の「Lee Konitz, Brad Mehldau, Charlie Haden, Paul Motian / Live at Birdland(11年、別頁あり)」はECMからのリリースなので、「Fly with Brad Mehldau」とでもしてしまえばレーベル的な問題もクリアーできるだろう。まあFlyがこれからもずっと続いていればの話だけどね。

ターナー曲が4曲、グレナディア曲が1曲、バラード曲が2曲、バラードとターナーの共作が1曲、3人の共作が4曲で全12曲。
「Steve Lehman Trio / Dialect Fluorescent」を聴いたときの興奮が醒めやらないせいか、本演奏はなんとなくつまらなく感じる。メンバー各人がそれぞれ自分の持ち味を発揮しているとはいえ、それが有機的に絡み合っていないんだよね。それとターナーのボリュームを抑え気味の、ある意味クラシック的な吹き方も好きではない。「Johnathan Blake / The Eleventh Hour(12年、別頁あり)」では久しぶりにいい感じのターナーを楽しめたのに、本作ではまたクールなプレイに徹しているのに加えて、フレーズもスケール練習しているような悪い癖が出てしまっている。せめてグレナディアとバラードがリズム面で楽しませてくれると嬉しいのだが、前作「Sky & Country」よりも静的なフリーフォームの曲を増やしていることもあって(聴き比べたわけではないので断言はできないが)、そちらの面においても満足できるとは言い難い。それでも何曲かはいいなと思わせてくれる演奏があるにしても、全体的によそよそしさが付きまとっているので、なかなか音楽に入り込むことができない。それには録音(Aya Merrillという人がエンジニア)も関係していて、テナーとベースに対しドラムスがかなり奥まって聴こえるので、バラードがどんなにいいことをやっていたとしても躍動感がなかなか伝わってこない。3人が対等の立場のトリオなのだから、その辺のところもきちんと考慮した音作りをする必要があったのではと思う。
と全くいいことは書いていないけど、やはりこのトリオはこれで限界ではないかな。あとはピアニストを加えるなりしてやっていくしかないだろう。その場合はもちろん音楽の方向性を修正する必要も生じてくる。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、 ☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)