Jonathan Kreisberg / Trioing

Jonathan Kreisberg(G)
Johannes Weidenmueller(B)
Ari Hoenig(Ds)
Rec. October 25, 2001, NY
(New For Now Music 0001)

2002年リリースの旧盤(再発?)だけど、やはりこのメンバーでやっているのを聴かないわけにはいかないだろうと思ってようやく入手。ジョナサン・クライスバーグの初聴きはCriss Crossからの「Jonathan Kreisberg Trio / Nine Stories Wide(04年)」だったのだが、本作はそれ以前の作品。これが初リーダー作かと思いきや、本人のサイトを見ると「Jonathan Kreisberg Trio(96年)」というのもあるんだね。まあそちらの方は知らないメンバーなので、わざわざ買うまでもないだろう。私としては大好きなクライスバーグが、本レコーディングの2001年の時点でどれだけ弾けているかと同時に、当時ケニー・ワーナーの「Kenny Werner / Form and Fantasy(01年)」に揃って参加していたヨハネス・ヴァイデンミューラーとアリ・ホーニグが、ギタートリオでどのようなプレイをしているのかが興味深い。二人はワーナーの一連のトリオ作品以外では、ホーニグの「Ari Hoenig/Inversations(07年、別頁あり)」でも共演しているけれど、どのアルバムをとっても抜群のコンビネーションで聴かせてくれるので(ホーニグは他にマット・ペンマン、フランソワ・ムタンとの相性も最高だが)、本作でのプレイも楽しみ。またクライスバーグも「Ari Hoenig/Bert's Playground(08年、別頁あり)」や「Ari Hoenig Punkbop / Live at Smalls(10年、別頁あり)」で、ホーニグとはたびたび共演している。

コルトレーンの「Countdown」、ハンコックの「Sorcerer」、サド・ジョーンズの「A Child is Born」、モンクの「Ugly Beauty」、スタンダード系の「All of You」「Sweet and Lovely」「I Fall in Love too Easily」「Old Devil Moon」「Have You Mer Mrs. Jones?」で全9曲。
クライスバーグのギター・スタイルはこの時代(01年)にすでに確立されている。その奏法はギターの音色も含めてオーソドックスな部類に入るのだが、だからといってピーター・バーンスタインのようなもろ王道路線的な感じがしないのがいいところ。といってもバーンスタインも大好きだけどね。クライスバーグはジャズ・ギタリストに転向する前はロックをやっていただけあって、オーソドックスなスタイルの中にもあらゆるギターの奏法を取り入れているので、本作のようなスタンダード曲がメインであっても、そのプレイは新鮮に聴こえる。大きく音色を変えるエフェクターは使っていないが、曲によってはボリューム奏法でエフェクティブな効果を醸し出したりしているのは、いまどきのギタリストなら当たり前の芸当とはいえセンスのよさを感じるし、オーソドックスながらも決して教科書的ではないフレーズを速弾きしている中での瞬時のコードの挟み方なんかも実に上手いね。わたし的にはジム・ホール・トリオのイメージが染みついている楽曲「A Child is Born」(7曲目)にしても、本演奏の方が良いのではと思わせるほどの最高のプレイで聴かせてくれる。そんなクライスバーグに大きくスポットが当たっていて、ヴァイデンミューラーとホーニグの見せ場は思ったほど多くはないのだが、それでもこのトリオがこれだけ魅力的に感じるのは、クライスバーグだけではなく非常に有機的なバッキングをしている二人がいるからこそ。もしこれが違う人だとなかなかこうはいかないだろう。でも同時期の録音の「Kenny Werner / Form and Fantasy」の方がもっと良かったような気もするけどね。特にホーニグは、ワーナー・トリオやジャン=ミシェル・ピルク・トリオから連なっている現在のドラミングの方がはるかに凄いことをやっている。とはいえ選曲からも想像が付くように、対戦型ではなく協調型のギタートリオなので、ドラミングとしてはこれで充分。これ以上叩くとホーニグ・トリオになってしまう。
2001年のレコーディングながら演奏にも録音にも古さは感じられないので、これがクライスバーグの新作だといわれても気づかないかもしれない。でもこの後に各人の現在の演奏を聴くと、その成長ぶりがよく分かるのではと思う。クライスバーグのレギュラートリオのメンバーはマット・ペンマン、マーク・ファーバーだが、できれば本トリオでの最新の演奏も聴いてみたいものだね。

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