Patrick Cornelius / Maybe Steps

Patrick Cornelius(As)
Gerald Clayton(P)
Peter Slavov(B)
Kendrick Scott(Ds)
Miles Okazaki(G)6,8,10
Assen Doykin(P)9
Rec. May 20,2010, NJ
(Posi-Tone Records PR8089)

ジェラルド・クレイトン、ケンドリック・スコット買い。リーダーのパトリック・コーネリアスを聴くのはこれが初めてかなと思って自ブログで検索したら、「Philip Dizack/Beyond a Dream(06年、別頁あり)」に参加していた。経歴等は本人のサイトに書かれてあるので後で読んでみるとして、リーダー作は「Patrick Cornelius/Lucid Dream」「同/Fierce(10年)」に続き、本作が3枚目にあたる。クレイトンとスコット以外のメンバーは知らない人ばかりだけど、ベースのピーター・スラヴォフは「Francisco Mela & Cuban Safari / Tree of Life(11年、別頁あり)」に参加しているのが見つかった。ギターのマイルス・オカザキは日本人のハーフかな。本人のサイトによるとリーダー作として「Miles Okazaki/Mirror(07年)」「Miles Okazaki/Generations(09年)」がリリースされているんだね。また1曲のみに参加しているピアノのAssen Doykin(1975年、ブルガリア生まれ)も、「Asen Doykin Trio/Meandering Road(07年)」がリリースされている。

コーネリアス曲が9曲と、ジョージ・シアリングの「Conception」、クルト・ワイルの「My Ship」で全11曲。
1曲目(1拍半ノリの6/8拍子)から私好みのガッツのあるサウンドが飛び出してきてなかなかいい感じ。でも2曲目以降は写真のイメージどおりの、いい意味で端正な演奏が続いているということは、きっと1曲目だけちょっと冒険してみたかったのだろう。コーネリアスのアルトの音色には力強さはさほど感じないにしても、低音部から高音部まで楽器がよく鳴っているし、バラード風な曲におけるサブトーンも雰囲気があって実にいい。どのフレーズも非常にメロディアスだし、リズム感も問題なしで、基本的にはオーソドックスなスタイルでありながらも、久しぶりにいいアルト奏者に巡り合えたといった感じがする。そんなコーネリアスの馴染みやすいプレイを聴いているだけでも飽きないのだが、共演者もまた自分の持ち味を曲調の範囲内できちんと発揮していて、特にクレイトンのピアノの上手さは本演奏においても際立っている。そのアドリブの素晴らしさにはついつい引き込まれてしまうほどなのに、それでいながら決してコーネリアスを喰ったプレイをしていないのがさすがだね。またスラヴォフの力強いベースも特筆ものだし、スコットも容赦なくガツンといっているのは1曲目だけではあるにしても、他の曲でも曲調によくマッチしたセンスのいいドラミングで聴かせてくれるし(ドラムソロがないのはいささか不満だが)、3曲に参加しているオカザキ(クレジットには3曲だけと明記されていないので、聴く前は全曲に参加していると思っていた)もいまどきの凄腕ギタリストと比較するとまだまだだけど、本演奏でのオーソドックスなプレイだけが全てではないような感じなので、リーダー作を聴いてみたいという気にさせてくれる。9曲目「My Ship」に参加しているAssen Doykinに関しては、アルトとピアノのデュオ曲で単にバッキングに徹しているだけなので、これ1曲だけでどうこうはいえない。
1曲目だけがやけに威勢がよくて、曲が進むにつれて尻すぼみになっていくものの(後半にはデュオもあるし)、アルバムとしてはそれなりにいい感じで楽しむことができた。各楽器の質感がきちんと捉えられている録音も上々で、さすがPosi-Toneレーベルだけのことはある。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)