Bill O'Connell(P)
Richie Flores(Conga)
Paquito D'Rivera(Cl)1,4
Dave Samuels(Vib)2,5,7,10
Dave Valentin(Fl, Alto-Fl)3,6,9
Rec. April 26, 2010, NJ
(ZOHO Music ZM201113)
ビル・オコーネルは「Bill Connors/Return(05年)」「Dave Valentin/Come Fly With Me(06年)」「Conrad Herwig/The Latin Side of Herbie Hancock(10年)」「Dave Valentin / Pure Imagination(11年)」(各別頁あり)でのプレイがなかなか良かったので、リーダー作はどんなかなと思って買ってみた。ところがCDが手元に届いてからパーソネルをよく見たら、普通のバンド形態ではなく、オコーネルのピアノとリッチー・フローレス(上記デイヴ・ヴァレンティン、コンラッド・ハーウィグ盤にも参加している)のコンガに、パキート・デリヴェラ、デイヴ・サミュエルズ、ヴァンティンが曲ごとにそれぞれ加わったトリオ編成だったんだね。それでアルバムタイトルも「Triple Play Plus Three」ということなのか。でもまあその方が逆に各人の上手さをたっぷりと堪能できると思うので、これでよしとしておこう。
オコーネルはラテンジャズ系の仕事が多いので、もしかするとそっち方面の生まれかなと思っていたら、本人のサイトを見ると生粋のアメリカ人(NY出身)のよう。リーダー作はこれまでに「Lost Voices(97年)」「Black Sand(01年)」「Latin Jazz Fantasy -Duo, Trio, Quartet, Quintet,Orchestra(04年)」「Triple Play(08年)」「Rhapsody In Blue(10年)」がリリースされている。そのうちの「Triple Play」(Savant盤)は同じようなタイトルなので、もしかして本作はジャケ違いの再発ものかと一瞬焦ったけど、Savant盤の方はオコーネル、フローレス、ヴァレンティンの3人だけだし、録音年も違うのでホッとした。
オコーネル曲が8曲と、モンクの「'Round Midnight」、クルト・ワイルの「Speak Low」で全10曲。
ドラムレスでコンガ入りなのは「Michel Camilo / Mano A Mano(11年、別頁あり)」とも共通するけれど、オコーネルはミッシェル・カミロのようにリズムの塊といった感じでガンガン弾き倒すようなタイプではなく、本格的なジャズの手法を取り入れながらラテンジャズをやっている人なので、音楽的な肌触りはだいぶ異なって聴こえる。もちろんいざというときにはスピーディーに弾きまくっているが、そのフレーズからはハンコックの匂いが感じられたりして、気合が入るほどにジャズ色が強まってくるのがカミロとは大きく違うところ。ラテン系のピアニストと比較するのなら、むしろダニーロ・ペレス、オトマロ・ルイーズ、エドワード・サイモン、ルイス・ペルドモの方だろう。そのノリのよさに加えてジャズ度も満点のピアノがなんともたまらない。また伴奏を務めているフローレスも、とんでもない手の速さでその凄さを見せつけてくれて(ソロもほとんどの曲で録っている)、こういうのを聴くとコンガの奏法も昔と比べると確実に進化していることがよく分かるね。そんな2人の息がピッタリと合ったプレイというか、オコーネルのフレーズに対してフローレスが瞬時に反応している様だけでも聴き応え充分だというなのに、デリヴェラ、サミュエルズ、ヴァレンティンの3人がまた実にいい仕事をしているのだから嬉しくなってしまう。デリヴェラに関しては、クラリネットではなくアルトの方がよかったような気もするけれど、特にヴァンレンティンの表情豊かなフルートには惚れ惚れするね。尺八的な奏法なんかもより一段と磨きが掛かっているようだ。またスパイロジャイラの「Morning Dance(79年)」が初聴きだったサミュエルズも、95年に結成したラテンジャズ・バンドCaribbean Jazz Projectを長年続けているだけあって、それなりのプレイで楽しませてくれる。
既成曲の「'Round Midnight」「Speak Low」も含めて、どの曲からもラテン特有の楽しさが伝わってくるのと同時に、各人のテクニックの素晴らしさも存分に堪能できて(特にフローレスの凄さには圧倒される)、これはベースもドラムスもいなくて正解だったね。演奏が良いのに加えて、季節の関係やCDプレーヤーを替えたこともあって、録音もやけに良く感じる。
評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)