3 Cohens / Family

Anat Cohen(Ts, Cl)
Avishai Cohen(Tp)
Yuval Cohen(Ss)
Aaron Goldberg(P)
Matt Penman(B)
Gregory Hatchinson(Ds)
Guest: Jon Hendricks(Vo)7,10
Rec. April 17-18, 2011, NY
(Anzic ANZ7002)

「3 Cohens/One(03年)」「3 Cohens/Braid(08年、別頁あり)」に続く3 Cohens(アナット・コーエン、アヴィシャイ・コーエン、ユヴァル・コーエンによる兄弟バンド)の3枚目。メンバーのアーロン・ゴールドバーグは前作から引き続きだが、今回はベースがオマー・アヴィタルからマット・ペンマンに、ドラムスがエリック・ハーランドからグレゴリー・ハッチンソンに交代。またゲストとしてジョン・ヘンドリックスが2曲に参加している。兄弟のうちアヴィシャイは、2004年にリリースされた「Avishai Cohen/The Trumpet Player(別頁あり)」と「Avishai Cohen / Introducing Triveni(10年、別頁あり)」(どちらもトランペットトリオ作品)が、またアナットはテナーを吹かずにクラリネットだけで臨んだライブ盤「Anat Cohen/Clarinetwork Live at the Village Vanguard(10年、別頁あり)」がと素晴らしかった。ユヴァルだけはまだリーダー作を聴いたことがないけれど(2枚リリースされているよう)、「Family」と題したますます兄弟の結束力が強まっていると思われる本作で、3人がピアノも含めた強力なリズム隊を相手にどのようなプレイをしているのかが楽しみだ。

アヴィシャイ曲が3曲、ユヴァル曲が2曲、エリントンの「The Mooch」、スタンダードの「On The Sunny Side Of The Street」「Tiger Rag」等で全10曲。
親分的存在だったアヴィタルが抜けたためか、コーエン兄弟の出身国であるイスラエル色は全く感じられなくなったのがむしろ潔い。でどんなことをやっているのかといえば、例えば1曲目はもろジャズ・メッセンジャーズ的なファンキー臭漂う演奏だし、ユヴァル曲の2曲目「Blues For Dandi's Orange Bull Chasing An Orange Sack」はテンポを次第に速くしていっているのがユニークではあるも、基本的にはいかにも3管編成のハードバップといった感じだし、アヴィシャイ曲の3曲目「With The Soul Of The Greatest Of Them All」はチャールズ・ミンガスに捧げているだけあってそれ風なサウンドだし、4曲目「The Mooch」、8曲目「Tiger Rag」は思いっきりニューオリンズ的な演奏だったりして、完全にアメリカナイズされている。もちろん今の人たちなので現代的な要素も加味されていて、アメリカのジャズの歴史をこれ一枚で表現しているような印象を受ける。それでいながらサウンドはきちんと統一感が取れているのがいい塩梅。聴きどころは何といってもコーエン兄弟のプレイで、アヴィシャイは文句のつけようがないほどに上手いし、アナットもクラがいいのは当然として、テナーも2年前に「青龍寺ジャズフェスティバル2009(別頁あり)」で生で観たときと比べるとだいぶよくなっているし、ユヴァルのソプラノもよく聴くとなかなか個性的で、これぐらい吹けるのだったらリーダー作も買ってみたいという気にさせてくれる。さすがに兄弟だけあってアンサンブルもバッチリ決まっていて、どんなに速いパッセージであっても一糸乱れずに吹いているし、ハーモニーなんかも完ぺきで、その素晴らしさを見せつけてくれる。また出番はそれほど多くないにしてもゴールドバーグ、ペンマン、ハッチンソンも単なるバッキングだけでは終わっていないのがさすがだし、ゲストで2曲歌っているヘンドリックスの味わいのあるヴォーカルも最高(アルバムのいいアクセントにもなっている)で、最後まで退屈することなく楽しむことができた。またCDプレーヤーを替えたおかげなのか、音もやけに良く感じるね。重心の低い、厚みのある音質がなんともたまらない。
タイトルチューンの9曲目「Family」(アヴィシャイ曲)だけが唯一物悲しい曲調となっているけれど、これはもしかすると祖国イスラエルの情勢が関係しているのかもしれない。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)