Wynton Marsalis, Eric Clapton / Play The Blues-Live from Jazz at Lincoln Center

Wynton Marsalis(Tp, Vo)
Eric Clapton(G, Vo)
Victor Goines(Cl)
Marcus Printup(Tp)
Chris Crenshaw(Tb, Vo)
Don Vappie(Banjo)
Chris Stainton(Key)
Dan Nimmer(P)
Carlos Henriquez(B)
Ali Jackson(Ds)
Guest: Taj Mahal(Vo, Banjo)9,10
Rec. April 7-9, 2011, Live at Jazz at Lincoln Center, NY
(Rhino 8122.797554)

ウィントン・マルサリスとエリック・クラプトンの共演とはなんとも珍しいのだが、きっと根っこの部分であるブルースが共通点となっているのだろう。そういえばマルサリスは、カントリー界の大御所ウィリー・ネルソンとの「Willie Nelson, Wynton Marsalis/Two Men With The Blues(08年)」や、さらにノラ・ジョーンズも加わったライブ盤「Willie Nelson, Wynton Marsalis featuring Norah Jones/Here We Go Again: Celebrating The Genius Of Ray Charles(11年)」がリリースされたりして、近年はポップス方面の人たちとの共演が多くなっているけれど、本作もまたそれの一環ということなんだろうね。一方のクラプトンは、本格的なジャズ・ミュージシャンたちと共演するのはこれが初めてかな。過去にはスティーヴ・ガッドがツアーに参加しているけれど、マルサリス率いるJazz at Lincoln Center Orchestraの選抜隊を相手に(キーボードのクリス・ステイントンだけはクラプトン側からの参加のよう)、いったいどのような演奏を繰り広げているのか興味深い。
なお本作はCDだけの盤(輸入盤のHMV価格1,279円)と、CD+DVD(輸入盤のHMV価格1,757円)の二種類があり、私はCD+DVD(CDと同じ内容にボーナストラックが1曲追加)の方を購入したので、DVDの感想を書くことにする。

クラプトンの「Layla」以外は、曲名を見ても作曲者を見てもピンとこない楽曲ばかりで全11曲(CDは10曲)。
映像は16:9のワイドで、音声はステレオと5.1サラウンド(DTS)の二種類。DVDにしてはかなり綺麗な映像だし、カメラワークもバッチリ。サラウンド音声はリア側への回り込みが極度に少ないのと、オフ気味に録れているので音の薄さが気になるけれど、聴いているうちに慣れてくる。
Jazz at Lincoln Centerでのライブ映像で、1曲目と2曲目の間にはマルサリスが解説しながらのリハーサル風景も挟み込まれている。その演奏はマルサリス側が完全に主導権を握っていて、それにクラプトンが歩み寄ったプレイをしているのだが、1曲目では本格的なニューオリンズジャズ・サウンドの中で歌ったりギターを弾いたりしているのが場違いのように感じてしまう。2曲目のブルース曲でようやくクラプトンも溶け込んでくるけれど、何せビートが相当昔風なので違和感は拭えない。3曲目ももろニューオリンズ的な演奏だし、続くどの曲もみんなそうなので、クラプトンが他流試合をしきれていないような感覚がずっと付き纏うねのだが、やはり彼の領域はいいとこR&Bまでであって、このようなブルースというよりは思いっきりニューオリンズジャズしてしまっている演奏(その原点がブルースなのかもしれないが)に参加するのは無理があるのかもしれない。クラプトンが影響を受けたロバート・ジョンソンの路線とも異なるわけだしね。マルサリスが一旦テーマを決めるととことんやるのはいつものことにしても、くどいだけのニューオリンズジャズ・サウンドには押しつけがましさを感じてしまい、さすがの私も途中で疲れてしまった。こうなると7曲目の「Layla」に期待するしかないのだが、これがまた見事にニューオリンズジャズに変身しているのだから逆にズッコケる。そんな中、最後の方に登場してくるタジ・マハールの本物のブルース・ヴォーカルが実に素晴らしい。ヴォーカリストが代わっただけで、バックの演奏からもより本物の匂いが漂ってくるのだから不思議なものだね。こうまで違うとなると、クラプトンは1~2曲歌うだけに留めておいて、最初からマハールに任せた方がよかったのではと思ってしまう。だいたいテンポを刻んでいる足踏みからして、みんな2、4拍のアフタービートなのに対し(2ビートの曲であったとしても)、クラプトンだけが逆の1、3拍刻みだしね。ノリ自体が違うので呼吸もバッチリ合うはずがない。
ということでマルサリスとクラプトンの共演はミスマッチの妙とまではいかなかった。でもラスト曲でアリ・ジャクソンが披露している本場のセカンドライン・ビートでのドラムソロや、その後のタンバリンも絡めたソロを目で確認できたのは、それなりの収穫だった。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)