Marc Berthoumieux / In Other Words

Marc Berthoumieux(Accordion)
Giovanni Mirabassi(P)
Henri Texier(B)
Andre Ceccarelli(Ds)
Rec. 2010?, France
(Sous la ville SLV004)

アコーディオンにはほとんど興味がなくて、所有しているアルバムも「Richard Galliano New York Trio/Ruby,My Dear(05年、別頁あり)」や、ピアニストのギル・ゴールドスタイン等が弾いているのが何枚かあるぐらいなのだが、本作はバックのメンバー(ジョバンニ・ミラバッシ、アンリ・テキシエ、アンドレ・チェカレリ)が最高なのですぐに飛びついた。
マルク・ベルソウミュー(?)を聴くのはこれが初めて。本人のサイトによると1960年フランス生まれで、これまでディディエ・ロックウッド、シャルル・アズナヴール、ハリー・ベラフォンテ、ディーディー・ブリッジウォーター、リチャード・ボナ等多くの有名どころと共演してきたようだ。リーダー作は「Les Couleurs d'ici(98年)」「Jazz I No Jazz Volume 1(04年)」「Jazz I No Jazz Volume 2(04年)」に次いて本作が4枚目。上記ボナやディーディーのアルバムにも参加していることからして、フランスではリシャール・ガリアーノの強力なライバルとなっているものと思われる。

ベルソウミューのオリジナルが1曲に、メセニーの「Have You Heard」、スティングの「A Thousand Years」、ペトルチアーニの「Lokking Up」、マイケル・ジャクソンの「Human Nature」、映画音楽の「La Scoumoune」、ロミー・シュナイダーの「Les Choses de la Vie」、スティーヴィー・ワンダーの「Love's in Need of Love Today」、エルトン・ジョンの「Your Song」、シンディ・ローパーの「Time after Time」、ボビー・マクファーリンの「Bang! Zoom」、10ccの「I'm Not in Love」と、幅広いジャンルからの選曲で全12曲。
まずメセニーの「Have You Heard」をこのメンバーでやっているというのが凄い。その演奏もかなり原曲に近いアレンジなのでメセニー好きとしてはウハウハ状態で楽しむことができるのだが、ミラバッシのアドリブが滅茶苦茶カッコいいし、続くベルソウミューももしかするとガリアーノよりも上手いのではと思わせるほどのテクニックと歌心で聴かせてくれて、早くも1曲目からノックアウトされる。それとアコーディオンが温かい音色で録れている録音も抜群に良いね。2曲目以降もほとんどが知っている曲のオンパレードで、選曲のセンスのよさがきらりと光っているのだが(アコーディオン奏者にありがちなシャンソンやピアソラ的なタンゴをやられるよりは、こういう曲の方が私としては好ましい)、原曲のイメージを大きく損なうことのないアレンジにも非常に好感が持てて、最後までいい感じで楽しむことができるね。ペトルチアーニ曲以外の原曲は非4ビート曲ではあるも、メンバーの特性を生かして4ビートになる場面もきちんと用意しているし、アルバムとしての動と静のバランスもちょうどいい塩梅で、もうベルソウミューのことは一発で気に入ってしまった。そのアコーディオン特有の哀愁を帯びながらも必要以上に甘口にはならず、ときとしてアグレッシブな展開さえ垣間見せている情感豊かなプレイが実に素晴らしい。また共演者の面々もさすがと思わせる仕事ぶりで、ベルソウミューと同じぐらいにアドリブ・スペースが用意させているミラバッシは、ヘタすると自分のリーダー作のときよりも良いのではと思ってしまうほどに魅力的なピアノを弾いているし(きっとこれらの楽曲群を演奏できるのがよほど嬉しかったのだろう)、テキシエとチェカレリのどんな曲においても躍動感が感じられる有機的なプレイにも非常に好感が持てる。
演奏は非の打ちどころがないほど素晴らしいし、各楽器の骨格がガッチリとしていて、なおかつ温かみのある録音も最高。これでテキシエとチェカレリの見せ場がもっと多ければ間違いなく5つ星にしていた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)