Stanley Jordan / Friends

Stanley Jordan(G, P)
Charlie Hunter(G)2,5, Buckiy Pizzarelli(G)3,7, Mike Stern(G)4, Russell Malone(G)7,11
Kenny Garrett(Ss)1,8, Nicholas Payton(Tp)1,8, Ronnie Laws(Ss)6
Regina Carter(Vln)6,9
Christian McBride(B)1,8, Charnett Moffett(B)2,3,5,6,7,10
Kenwood Dennard(Ds, Key)1,2,3,4,5,6,7,8,10,11
Rec. 2011?, NY
(Mack Avenue MAC1062)

スタンリー・ジョーダンの、メロディーとバッキングを同時に弾いてしまう両手によるタッピング奏法は、85年(だったかな?)のデビュー当時は相当衝撃的だったのだが、やはり奏法自体に無理があったのか、リズムが雑になりがちなのと、タッピングだとどうしてもダイナミクスを表現できない(音の強弱がつかない)せいで、次第に人気を失っていった感がある。私としてもすでに過去の人となっていたのだが、本作は同じギタリストであるチャーリー・ハンター、バッキー・ピザレリ、マイク・スターン、ラッセル・マローンとの共演に加えて、ケニー・ギャレット、ニコラス・ペイトン、クリスチャン・マクブライド、さらにはレジーナ・カーターも参加しているのだからすぐに飛びついた。前作「Stanley Jordan/State Of Nature(08年)」の方はあまり興味が湧かなかったので買わなかったけど、核となるメンバーのチャーネット・モフェットとケンウッド・デナードはそれにも参加しているんだね。そういえばデナードもまた右手でドラムスを叩きながら左手でキーボードを弾いてしまう一風変わった人だけど、結局は似た者同士ということでジョーダンとも仲がよいのかもしれない。

ジョーダン曲が4曲と、マローン、デナードとの即興曲が1曲、コルトレーンの「Giant Steps」、チャーリー・クリスチャンの「Seven Come Eleven」等で全11曲。
まずは演奏がどうこうよりも、20年ぶりぐらいに聴いたジョーダンなので懐かしさが込み上げてくる。当時は色もの的に感じていた両手タッピング奏法も、ギタリストがもう一人いることもあってそんなに気にならないし、4ビートが主体のグッとジャズ寄りの演奏をしているのもグッド。なんか久しぶりに聴いたせいかやけによく感じるね。聴きどころはなんといっても昔と変わることのないジョーダンの唯一無二のギター・プレイなのだが、共演者の面々もまた個性豊かなプレイでジョーダンを助太刀しているおかげで、なかなか魅力的なアルバムに仕上がっている。また各曲と参加メンバーの相性もバッチリで、例えば3曲目の「Lil' Darlin'」はピザレリ以外に適任者はいないのではと思ってしまうほどにフィットしているし、続く4曲目の「Giant Steps」なんかもスターンならではの演奏(普段のようなイケイケぶりは少ないが)となっていて実にいい塩梅。それとギタリストの代わりにギャレット、ペイトン、マクブライドが参加している2曲とカーター入りの2曲も、アルバムのとてもいいアクセントとなっているね。5曲目「I Kissed A Girl」と9曲目「Romantic Intermezzo From Bartok’s Concerto For Orchestra」ではジョーダンが素晴らしいピアノを披露しているけれど、結局のところ両手タッピング奏法は、右手と左手を分離させる必要のあるピアノを子供の頃に習得した(と思われる)からこそ出来た技なのだろう。
ジョーダンはもちろんとして、ゲスト参加の各人も非常にいい仕事をしているし、バッキングを務めているモフェットとデナードもなかなかの健闘ぶり。特にデナードは1曲目「Capital J」の4ビート曲での気合の入りようが半端でない。彼はジャコパスとやっていた時代は最悪だったけど、本作では「Pat Martino/Joyous Lake(76年)」には到底及ばないにしても、曲によってはそれなりに魅力的なドラミングで聴かせてくれる。
ベスト曲はラストの11曲目「One For Milton」の即興演奏。ここまでは調和の取れた演奏が続いてきた中で、ジョーダンとマローンが(デナードも少しだけ絡んでいる)、お互いにライバル心を燃やしながら容赦なくいっているのが素晴らしい。他の曲も平均的に良いのだが、録音に関してはモフェットとマクブライドのベースがロン・カーターのようにベタッとしてしまっているので、できれば彼らなりのもっと力感のある弾んだ音で録って欲しかった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)