Roberto Gatto and Lysergic Band / Pure Imagination (J)

Giovanni Falzone(Tp)
Gaetano Partipilo(As)
Max Ionata(Ts, Ss)
Roberto Rossi(Tb)
Battista Lena(G)
Alessandro Lanzoni(P)
Dario Deidda(Ac-B, El-B)
Roberto Gatto(Ds)
Rec. September 28-30, 2010, Rome
(Albore Jazz ALBCD016)

「Roberto Gatto Quintet/Remembering Shelly(10年、別頁あり)」「Roberto Gatto Quintet / Remembering Shelly #2(10年、別頁あり)」に続く、ロベルト・ガットのAlbore Jazzからの3枚目。メンバーはガットと同様いまや説明不要のマックス・イオナータ(前2作品にも参加)以外は知らない人ばかりだけど、調べてみたらロベルト・ロッシを除き各人ともリーダーアルバムをリリースしているやり手なんだね。イタリアのジャズはけっこう聴いているつもりでいても、このように知らない人がいっぱいいたりしてまだまだ勉強が足りないことを痛感する。でもこのメンバーでCDの帯にあるようにオールスターと呼ぶのは、ちょっとオーバーな気がしないでもない。各人の経歴等は調べるのに時間が掛かるので割愛するが、とりあえず名前の読み方だけはジャケットどおりにジョヴァンニ・ファルツォーネ、ガエターノ・パルティピーロ、バッティスタ・レーナ、アレッサンドロ・ランツォーニ、ダーリオ・デイッダと記しておく。

ガット曲が5曲、ロッシ曲が1曲、レーナ曲が1曲、ショーターの「Fall」、デューイ・レッドマンの「Mushi Mushi」等で全10曲。
2曲目の「Fall」は大好きな曲なのだが、1曲目と同じような雰囲気での演奏なのでなんとなく凡庸に感じてしまう。その点ミディアムファーストの4ビートの3曲目「Mushi Mushi」は、特にアルトのパルティピーロがいい感じにぶち切れていたりして好感が持てる。トランペットのファルツォーネのアドリブ部分ではフリー調の展開にもなっていたりして、バンドとしての演奏自体もなかなかアグレッシブだね。でも4曲は1、2曲目と同様に「カツカツ」したビートが基調となっているので、またこんなのかと思ってしまう。とはいえロッシ、ランツォーニ、イオナータ(この曲ではソプラノを吹いている)はかなり熱いアドリブを繰り広げているのでこれでよしとしておこう。5曲目は正真正銘の「カツカツ」ビートだけど、昔の「Chicago」を連想させるようなブラスロック調の演奏だし、途中からはラグタイムやディキシー的なものもぶち込んだりして、そのユニークな楽曲が実に面白い。曲調がプログレ的にコロコロ変わるのも何とも爽快だね。6曲目もディキシーを連想させる演奏だったりして、ここまで聴いてこのバンドが特定の形式には拘らない、何でもありのバンドだということが分かってきた。この曲ではこれまでウッドを弾いていたデイッダがエレベで素晴らしいソロを披露しているし、ロッシのトロンボーンも芸達者ぶりを見せつけてくれる。そのロッシは続く7曲目でも大活躍で、本作の実質的なリーダーは彼ではないかと思うほどによく目立っているし、さらにこの曲ではスペーシーに弾いているギターのレーナと、先の展開が全く読めないランツォーニのピアノもなかなかの聴きもの。この曲もまた「カツカツ」感のあるボサノバ基調の曲だけど、テーマにはアバンギャルドなユニゾン部分があったりして、5曲目と同様なかなかユニークだね。
残りの曲は省略するけれど、1曲目から2曲目の流れだけは疑問に感じたものの、曲が進むにつれてイタリアン・ハードバップとはまた一味違う方向性の演奏の面白さにはどんどん引き込まれてしまった。メンバー各人のテクニックも文句なしで、リーダー作の方も聴いてみたいという気にさせてくれる。肝心のガットは縁の下の力持ちといった感じでほとんどバッキングに徹しているだけではあるけれど、バンドとしてこういうことまでやってしまう引き出しの多さには感心する。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)