Stefon Harris, David Sanchez, Christian Scott / Ninetymiles

Stefon Harris(Vib)
David Sanchez(Ts)
Christian Scott(Tp)
Rember Duharte(P, Vo), Oamar Salazar(El-B), Eduardo Barroetabena(Ds), Jean Roberto San Miguel(Bata, Congas, Per)1,6,8
Harold Lopez-Nussa(P), Yandy Martinez Gonzalez(B), Ruy Adrian Lopez-Nussa(Ds), Edgar Martinez Ochoa(Congas, Djembe, Per, Bata)2,3,5,7,9
Rec. 2010?, Havana
(Concord Pieante CPI-32904)

Concordアーティストのステフォン・ハリス、デヴィッド・サンチェス、クリスチャン・スコットがキューバに乗り込んでの、現地の有名ミュージシャンと思われる2組のピアノトリオ+パーカッションとのレコーディング。おそらく言い出しっぺは、「Eddie Palmieri/Listen Here !(05年)」「Ignacio Berroa/Codes(06年)」「The Rodriguez Brothers/Conversations(07年)」(各別頁あり)等、ラテン絡みの吹き込みもけっこう多いプエルトリコ出身のサンチェスだろう。サンチェスは、同じくサンチェス姓の「Antonio Sanchez/Migration(07年、別頁あり)」「Antonio Sanchez / Live in New York: at Jazz Standard(10年、別頁あり)」や「Kenny Werner / Balloons(11年、別頁あり)」での活躍ぶりが最高だったし、リーダー作「David Sanchez/Cultural Survival(08年、別頁あり)」も素晴らしかった。またハリスもファンク路線の「Stefon Harris & Blackout/Urbanus(09年、別頁あり)」がなかなかの聴きものだった。ただしスコットは、デビュー作「Christian Scott/Rewind That(06年、別頁あり)」だけはそこそこ好感が持てたものの、続く「Christian Scott/Live at Newport(08年、別頁あり)」「Christian Scott/Yesterday You Said Tomorrow(10年、別頁あり)」の方はマイルス的なカッコつけがイマイチ好きになれないでいる。それは一昨日聴いた「Ben Williams / State of Art」(1曲のみ参加)も変らなかったので、キューバのミュージシャンたちとの共演で、これまでとは違うもっとストレートな一面を見せて欲しいと思っている。

サンチェス曲が2曲、ハリス曲が3曲、Rember Duharte曲が2曲、Harold Lopez-Nussaが2曲で全9曲。
レコーディングの前段階でしっかりとリハーサルを積んだのか、決して「せーの」的なセッションではないビシッと決まっている演奏がまずいいね。そのサウンドは想像していたいかにもラテンジャズ然としたものは少々異なり、確かにそれ風な曲もあるものの、それよりもゴンサロ・ルバルカバのフリオ・バレット入りのトリオ~カルテット「Gonzalo Rubalcaba Quartet/Suite 4 y 20(92年)」「Gonzalo Rubalcaba Quartet/Rapsodia(93年)」「Gonzalo Rubalcaba Trio/Diz(94年)」「Gonzalo Rubalcaba Quartet/Antiguo(97年)」あたりのサウンドによく似ていている。そのキビキビとした非4ビート基調の演奏がなんともカッコいいし、ウッド入りとエレベ入りの2組のピアノトリオ+パーカッションとやっているので、それぞれのトラックでサウンドが微妙に異なっているのもいい塩梅。それとサンチェスとハリスは普段とさほど変わらないプレイをしているものの、スコットに関しては自分のバンドのときとは見違えるように素直に吹いているのには感心する。そのフレディー・ハバード的な華のあるトランペットが、やっている音楽にもよくマッチしているね。また2組のバンドも、さすがにキューバの人たちだけあってテクニシャン揃い。特にジャコ的なエレベを弾いているOamar Salazarは一発で気に入った。でもどちらのバンドも基本的にはバッキングに徹しているだけで、ベース以外のピアノ、ドラムス、パーカッションは全く聴き分けができないので、出来れば彼らの見せ場をもっと増やしてほしかった。そうでないとわざわざお金をかけてキューバまで行ってやる必要もなかったような気がするけどね。おそらくNYを拠点に活動しているラテン系の人たちとは、特にサンチェスあたりはもう散々やり尽くしているので、どうせやるのなら現地に出向いて本場の空気に触れてみたかったということなのだろう。それが3人のプレイに何らかのプラスになっているとは、スコット以外は思えないにしても、旅行も兼ねていい気分転換になっているのは間違いなさそうで、どの曲もノリノリで聴かせてくれる。
パーカッション(コンガ)入りのラテンジャズ系のアルバムの近作としては「Michel Camilo / Mano A Mano(11年、別頁あり)」が超強力だったし、「Dave Valentin / Pure Imagination(11年、別頁あり)」もなかなか良かったので、それらと比較すると本作はインパクトに欠けるけど、ラテン系のジャズは基本的に大好きなので、最後までいい感じで楽しむことができた。でも彼らが普段やっている音楽の方が、もっとオリジナリティがあって面白いのではと思ってしまうところもあるかな。まあ3人が揃ってこの手の演奏をするのは今回限りだと思うので、これでよしとしておこう。
CDをしまう段階になってインタビューとライブ収録の別音源が2曲入りのオマケDVDも付属していることに気が付いたけど、さすがにライブだけあってこちらの方は無条件で楽しめる。これでわずか1,448円(Amazon価格)なのだから安いものだね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)