Alex Sipiagin / Destinations Unknown

Alex Sipiagin(Tp, Flh)
Chris Potter(Ts)
David Binney(As)
Craig Taborn(P, Rhodes)
Boris Kozlov(B)
Eric Harland(Ds)
Rec. January 14, 2011, NY
(Criss Cross 1336)

いつも強力なメンバーとレコーディングしているアレックス・シピアジンだけど、本作もまたクリス・ポッター、デヴィッド・ビニー、クレイグ・タボーン、ボリス・コズロフ、エリック・ハーランドなのだから非常にそそられる。その中のコズロフはほとんどのシピアジンのリーダー作に参加しているし、ポッターも「Alex Sipiagin Quintet/Hindsight(02年、別頁あり)」「Alex Sipiagin Sextet/Equilibrium(04年)」「Alex Sipiagin/Prints(07年、別頁あり)」で、またビニーもそのうちの「Equilibrium」で共演しているのだが、それに加えて今回はポッターとはChris Potter Undergroundでも一緒にやっているタボーンと、いま一番売れっ子の凄腕ドラマー、ハーランドが参加しているのだから、いったいどれだけカッコいいことになっているのかが楽しみ。おそらく本演奏のカギを握っているのはこのハーランドだろう。

シピアジン曲が6曲と、その他1曲で全7曲。
3管編成ながらもハードバピッシュな演奏とは傾向が異なっているのは、まさにこのメンバーならではだね。1曲目や2曲目のテーマ部分なんかは、どちらかというとジャズをやっているときのブレッカー・ブラザーズあたりに近いものがある。曲によって4ビート基調の曲もあれば16ビート的なのもあるけれど(曲中でビートが変化する曲もあり)、そのいずれもが現代的な曲調となっているのは、いまさらいうまでもないだろう。シピアジンばかりではなく、ポッターとビニーにも大きくスポットが当たっていて、フロントの3人の持ち味をたっぷりと堪能できるのだが、そのアドリブはけっこう長めだし、ワンコード風な曲も多いことからして、もしかするとセッション的な意味合いの強いレコーディングだったのかもしれない。おかげで7曲中5曲までが10分以上の長めの演奏となっている。もちろんセッションといっても、「枯葉」とかをせーのでやるのとはわけが違い、演奏自体はきちんと構築されているけどね。普段は奥方のマンデイ満ちるのバンドでの仕事も多いシピアジンは、このメンバーの中でも特に初共演と思われるハーランドとやれたことがよほど嬉しかったとみえて、そのフレージングからはいつもとはまた一味違った高揚感が伝わってくる。それに応えてハーランドも一切手抜きなしの自由奔放で元気いっぱいのドラミングをしているのだから(ソロも用意されている)、私としてはもうそれだけでもウハウハ状態になってしまう。これまでのシピアジンのリーダー作はアントニオ・サンチェスのイメージが強かったけれど、ハーランドもまた楽曲の範囲内で強力無比に攻めまくっていて実に素晴らしいね。またビニーも普段と変わらないアグレッシブなプレイで楽しませてくれるし、シピアジンに調和を取りながら吹いていながらも、曲が進むにつれて次第に牙を剥いてくるポッターのブチ切れぶりもさすがとしかいいようがない。さらにはタボーンもエレピを中心にいい仕事ぶりを見せているし(6曲目での即興的なアコピも聴きもの)、ビートを刻んでいるだけでも存在感のあるコズロフも、ソロでは思いっきり本領を発揮していて、とにかくどの曲も最高にいい感じで楽しむことができる。それに加えてマイケル・マルシアーノ担当の録音もCriss Crossとしては上々なのだから、もう本作には何も文句がない。これまでのシピアジンのアルバムも相当良かったけれど、本作はまた格別って感じがするね。ちなみにシピアジンは先日注文した「Paolo Recchia / Arri's Desire」にも参加しているので、そちらの方も楽しみにしている。
それにしてもここ1ヶ月ほど5つ星がやけに増えてしまっているけれど、決して評価基準が甘くなったわけではなく、本当に良いのだから仕方がない。どうしてこんなにも良い作品が続けざまにリリースされるのか、きっとそれだけミュージシャンが現状に甘んじることなく、互いに切磋琢磨しているということなのだろう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)