Ambrose Akinmusire / When the Heart Emerges Glistening

Ambrose Akinmusire(Tp)
Walter Smith III(Ts)
Gerald Clayton(P)
Harish Raghavan(B)
Justin Brown(Ds)
Rec. September 20-22, 2010, NY
(Blue Note 0706192)

「Danny Grissett/Form(09年)」「Walter Smith III/Live in Paris(10年)」「Walter Smith III / III(10年)」「Linda Oh Trio/Entry(10年)」「Michel Portal / Bailador(10年)」(各別頁あり)等で素晴らしい活躍ぶりを見せていたアンブローズ・アーキンムシーレイ(1982年ナイジェリア生まれ、カリフォルニア育ち)だけど、それもそのはずで2007年のセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションの他に、同年のカーマイン・カルーソー・国際ジャズトランペット・ソロ・コンペティションでも優勝しているのだそうだ。
本作はFresh Soundからの「Ambrose Akinmusire/Prelude(08年)」に続く2枚目のリーダー作なのだが、Blue Noteがこういう大型新人に肩入れするのは、なんか久しぶりのような気がするね。メンバーはアーキンムシーレイをいち早くバンドに迎えていたウォルター・スミスIIIと、アーキンムシーレイ同様に躍進が著しいジェラルド・クレイトン(最新作「Gerald Clayton / Bond: the Paris Sessions」の入荷が待ち遠しい)。ベースのハリシュ・ラガワン(?)は、「Eric Harland / Voyager: Live by Night(10年、別頁あり)」でスミスIIIと一緒だったし、ドラムスのジャスティン・ブラウン(スミスIIIと共に1枚目にも参加している)は、クレイトン・トリオの「Gerald Clayton/Two-ShadFresh Sounde(09年、別頁あり)」や上記「Bond: the Paris Sessions」の一員ということで、これでメンバー間の繋がりがよく分かる。

アーキンムシーレイのオリジナルが12曲(かな?)と、スタンダードの「What's New」で全13曲。
1曲目の出だし部分がいきなりソロなのは、アーキンムシーレイの自信の表れなのだろう。全体演奏に入ってからのサウンドは、ジャケットのイメージにもよくマッチする現代風なビートを活かしたもので、同じトランペット奏者のクリスチャン・スコットあたりとよく似ているね。でもこちらの方がジャズっぽいというか、やっていること自体完全にジャズなので、私としてはより好感が持てる。アーキンムシーレイの細かいテクニックよりも人間臭さを前面に打ち出している個性的なプレイが聴きものだし、スミスIIIもなかなかの熱演ぶり。ただしアコースティックな演奏にエフェクト効果を与えようとしてか、トランペットとテナーの音を左右にパンポットさせている部分があるのには疑問を感じるね。この辺はエンジニアのセンスの問題だと思うけど、演奏だけでも充分に聴かせてくれるバンドなので、このような小手先のテクニックは必要なかったと思う。2曲目はトム・ハレル的な雰囲気を感じさせる7/8拍子基調の曲。比較的穏やかにスタートするのだが、トランペットとテナーのバトルの部分ではガンガン盛り上がっているのが実にいい感じ。フルパワーで叩いているブラウンのスピーディなドラミングもなかなかの聴きものだね。3曲目は50秒ほどのベースソロで、その図太くてガッチリとした音色がオーディオ的に超快感。それに繋げて演奏される4曲目はバラード調の曲。特に誰がアドリブをっとっているというわけでもなく、基本的にはテーマ部分を繰り返しているだけの演奏だけど、それでいてこれだけ聴かせてくれるのだから大したものだね。この曲ではクレイトンがエレピを用いているのがいいアクセントとなっている。5曲目はトランペット、ベース、ドラムスだけによる2分弱の短い曲ではあるのだが、その自由度の高い演奏が非常に魅力的。同じくトリオ編成の「Linda Oh Trio/Entry」と比較すると、アーキンムシーレイの著しい成長ぶりが窺える。6曲目は弾まないレゲエ・ビートを基調とした曲。といってもこの曲でもブラウンはシンプルなビートに徹することなく、途中からは容赦なくガンガンいっているけどね。それに煽られて、特にクレイトンがテンションの高いピアノを弾いているのが素晴らしい。7曲目はトランペットとピアノのデュオ。クレイトンが伴奏に回っているだけの演奏だけど、こういうのを聴くとアーキンムシーレイがトランペットのあらゆるテクニックをきちんと吸収しているのがよく分かるね。それでいながらどんな曲であっても教科書的には吹かないので、より個性が引き立っている。8曲目はピアノソロの小品。9曲目はナレーション的なものを入れながらの、一風変わった感じのドラムソロ。ブラウンの一人舞台だけど、これを聴くと彼がエリック・ハーランドにも匹敵するほどのやり手ドラマーなのがよく分かる。モーダルな10曲目は、フリー的な展開まで見せているのが滅茶苦茶カッコいい。
残りの曲は省略するけれど、「What's New」以外は全体的にダークな曲調で統一していながらも、曲ごとに起伏に富んだ演奏をしているので、アルバムとしてのサウンド・カラーが決して一本調子にはなっていないのが素晴らしいね。気になったのは1曲目のエフェクト的な部分だけで、それ以外はガッチリとした音像で捉えられている録音も含めてほぼ完ぺき。アキンムシーレイのBlue Noteデビューに相応しい作品に仕上がっていると思う。近々国内盤もリリースされるようなので、これでますます知名度がアップするのは確実だろう。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)