Ralph Bowen / Power Play

Ralph Bowen(Ts, Ss)
Orrin Evans(P)
Kenny Davis(B)
Donald Edwards(Ds)
Rec. February 4, 2009, LA
(Posi-Tone PR8073)

「Ralph Bowen/Dedicated(09年、別頁あり)」「Ralph Bowen/Due Reverence(10年、別頁あり)」では、アダム・ロジャーズ、ジョン・パティトゥッチ、アントニオ・サンチェスのコンテンポラリーな面々との共演で快調に飛ばしていたラルフ・ボウエンだけど、今度は一転して共演者が全員黒人ミュージシャンなのが興味深い。メンバーのオリン・エヴァンスは同じPosi-Toneからの「Orrin Evans/Faith in Action(10年、別頁あり)」がなかなか良かっただけに、本作でのプレイも楽しみ。ケニー・デイヴィスは初リーダー作「Kenny Davis/Kenny Davis(10年、別頁あり)」が素晴らしかったのだが、それにはボウエンも参加していたので、そこから本作での共演へと繋がっているのだろう。またドナルド・エドワーズは「Mark Whitfield/Trio Paradise(05年、別頁あり)」「Conrad Herwig/A Jones For Bones Tones(07年、別頁あり)」「George Colligan/Come Together(09年、別頁あり)」でのシャープなドラミングが好印象だった。
鳴り物入りのOTB(Out of The Blue)でデビューしたボウエンも、いまやすっかりベテランの域に達しているけれど、それでいながら常に向上心がみられる姿勢が私は大好き。その音楽性やテクニックの素晴らしさは、今は亡きマイケル・ブレッカーやボブ・バーグと比べても決して引けを取らないと思っている。

ボウエン曲が8曲と、「My One and Only Love」で全9曲。
前2作と同様、本作においてもテナーの上手さが際立っていて、なんか最近のボウエンは絶好調って感じがする。その現代的なフレーズを駆使しながらの吹きっぷりのよさがなんともたまらないし、決してメタリックではないテナーの音質も最高だね。またエヴァンス以下のメンバーとの相性も抜群で、4人が一体となりながらの熱気あふれる演奏がとにかくカッコいい。楽曲はモード調の4ビートが主体となっていて、中には2曲目や5曲目のようなマッコイ・タイナーを意識していると思われる曲調もあるのだが、その辺のところがエヴァンスの嗜好ともバッチリ合っているとみえて、どの曲においてもタイナーやハンコック的なモーダルな雰囲気を随所に醸し出しながら実にいい感じで弾いているので、ピアノトリオの場面であってもダレることなく楽しむことができる。そんなボウエン(テナーだけではなく、2曲で吹いているソプラノもグッド)とエヴァンスのテンションの高いプレイがなんといっても聴きものだね。またリズム隊の二人も、パティトゥッチやサンチェスと比べるとメンバー的には小粒ではあるものの、デイヴィスはソロのような見せ場は少ないにしても、ウォーキング・ベースの一音一音を丹精込めて弾いているのを聴いているだけでもその上手さがビンビン伝わってくるし、エドワーズもサンチェスほどはダイナミックでないけれど、手数が多くて切れ味もいいドラミングがこの演奏にはバッチリ嵌っていて、二人ともまだまだ知名度は低いけど、ボウエンやエヴァンスと比較しても聴き劣りすることのないプレイで大いに演奏を盛り上げている。
ミディアムテンポ以上の動的な演奏を中心にやっているのが非常に私好みなのだが、「My One and Only Love」(この曲でのボウエンのテナーも絶品)や7、9曲目のようなバラード曲でも最高に聴かせてくれて、もう本作には何も文句がない。とはいえもっと凄いメンバーとやっていれば、これ以上の演奏になっていたことは目に見えているので、5つ星とまでとはいかないけどね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)