Peter Erskine, Bob Mintzer, Darek Oles, Alan Pasqua / Standards 2, Movie Music

Bob Mintzer(Ts)
Alan Pasqua(P)
Darek Oles(B)
Peter Erskine(Ds)
Rec. November 18, 2009, CA
(VideoArts Music - Fuzzy Music VACM1426)

「Pasqua,Carpenter,Erskine/The Way You Look Tonight(07年、別ページあり)」(輸入盤タイトルは「Standards」)の続編。その間にデイヴ・カーペンターが亡くなってしまったので、ベースはダレク・オレスに交代。また今回は新たにボブ・ミンツァーも参加している。メンバー的にはとてもいいのだが、国内盤タイトルが「ニューシネマ・パラダイス~映画音楽をジャズで」なので、音楽的にはどうかなってことろはある。せっかくのミンツァーとピーター・アースキンの共演なのだから、どうせだったら「The Hudson Project(00年)」のような気合いの入った音楽をやってくれると嬉しいんだけどね。そう思って買った「Bob Mintzer/Canyon Cove(10年、別ページあり)」も音楽的には悪くなかったけれど、イメージしていたのとは少々異なっていた。とはいえ同じくスタンダードものの前作「The Way You Look Tonight」は、真空管式ステレオマイクを2組だけ用いたダイレクト2トラックのホール録音という、シンプルかつマニアックな録音による音質の良さだけでも充分に楽しめたので(特注ポリカーボネートCDというのも関係していたのかも)、写真を見るとまた同じ方式で録音している本作には、音的には過剰な期待をしている。ちなみにパスクァ、オレス、アースキンのトリオでは、すでに「The Interlochen Concert(10年)」というライブ盤がリリースされているのだが、こちらの方はHMVでは取り扱っていないし、Amazonもダウンロード販売のみなので、いち早いCD販売が待たれるところである。

「Tara's Theme」「Somewhere」「Dr. Kidare(mein theme)」「Three Stars Will Shine Tonight」「Night and Day」「Rosemary's Baby(main theme)」「Cinema Paradiso(intro/main theme)」「Cinema Paradiso」「I Concentrate On You」「For All We Know」と、映画音楽曲やスタンダードで全10曲。
「The Way You Look Tonight」と同様に、本作もまた実に良い音で録れているね。ホールの自然な残響を活かしながらの、いかにも真空管マイクらしい骨格がガッチリしていながらも温かみのある音質がなんともたまらない。この加工臭が一切しない、楽器本来の生音に非常に近いリアルな音を聴いていると、本作が映画音楽をテーマにしていることなんてどうでもよくなってくる。もちろん演奏自体もミディアムテンポやそれ以下のものがメインではあるにしても(アップテンポの曲もあり)、各人の個性がそれなりに発揮されているので納得がいく。同じくパスクァとアースキンが共演している「Live at Rocco(00年)」「Badlands(02年)」や、「The Way You Look Tonight」と比較しても遜色がないし、ミンツァーが参加しているので、また違った雰囲気で楽しむことができるね。といってもそれはあくまでも楽曲の範囲内でのことであって、どうせやるのならオリジナルをメインでいってほしかった。でもこの楽曲群でこれだけ聴かせてくれるのだから、やっぱりこの4人は大したものだね。ミンツァーは例によって現代的ながらも比較的分かりやすいフレーズが滅茶苦茶カッコいいし(曲調に応じてシンプルに吹いていても、その上手さはビンビン伝わってくる)、パスクァはミンツァーが参加したことにより出番が少なくなってしまったにしても、エレクトリック路線のときとはまたひと味違ったセンスのいいピアノが素敵だし、カーペンターの代役で参加したオレスのガッチリとしたベースも相性がバッチリ。またリーダー格のアースキンも、生ピアノと音量的なバランスをとりながらとはいえ、それなりにダイナミックなドラミングをしているのでもの足りないとは感じない。といってもドラムソロのような派手な見せ場はもっとあってもよかったと思うけどね。それとドラムスは現在使用中のDWではなく、それ以前に愛用していたヤマハの方が音質的にアースキンにはよく合っているような気がするのだが、その辺は大人の事情もあると思うので致し方ないだろう。
ということで本作にはあまり期待していなかったわりには良かった。さすがにこのメンバーだけのことはあるね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)