Kevin Eubanks / Zen Food

Kevin Eubanks(El-G, Ac-G)
Marvin "Smitty" Smith(Ds, Per)
Bill Pierce(Ts,Ss)
Gerry Etkins(P, Rhodes, Or)
Rene Camacho(B)
Rec. 2010?, LA?
(Mac Avenue MAC1054)

ニュータイプのジャズ・ギタリストとして、80年代半ばから90年代にかけてブイブイいわせていた感のあるケヴィン・ユーバンクスだけど、ここ何年も音沙汰がなくて、もう過去の人になりかけていたところ。それはマーヴィン・スミッティ・スミス(Drummer項あり)にも共通するのだが、どうやら二人とも長い間TV番組「Tonight Show」の仕事で忙しかったようだ。なので久しぶりのコーディングがとても嬉しいのだが、その間にテクニックも音楽性も抜群の若手がどんどん台頭しているので、はたして彼ら以上のことをやれているのかどうかが気になるところである。
他のメンバーのビル・ピアースは、おそらくBilly Pierceと同一人物だと思うけど、だとするとリーダー作「Billy Pierce/Equilateral(88年)」「同/Epistrophy(95 年)」がある他に、ジョン・スワナやジャボン・ジャクソンのCriss Cross初期作品(90年頃のレコーディング)にも参加している。またジェリー・エトキンスは、ビリー・コブハムのGRP時代の4作品に参加しているのが見つかった。レネ・カマチョについては割愛するが、もしかするとユーバンクスは、このメンバーで「Tonight Show」に出演していたのかもしれない。

ユーバンクス曲が9曲と、エトキンス曲が1曲で全10曲。
16ビート系を中心に4ビートも何曲か。いかにもユーバンクスらしい曲作りがとても懐かしいのだが、演奏の方はさらにパワーアップしているような印象を受ける。もしかすると「Tonight Show」でのうっぷんを晴らしているのかな。大衆向けのTV番組だと、やりたいことも思うようにはできないからね。いずれにしても久しぶりのレコーディングということで、相当気合が入っていたのは間違いないだろう。ユーバンクスにしてもスミスにしてもスピーディに攻めまくっていて、まだまだ若い者には負けていないことを実証している。ただし中には爽やかフュージョン的な曲もあるし、スミスがなぜかほとんどの曲で普通のスティックではなくロッド系のスティック(別頁参照)で叩いている(ように聴こえる)ので、全体的なサウンドの肌触りはけっこうソフトだけどね。録音の関係でドラムスの音が奥まって聴こえるのでなおさらだ。なのでハードな演奏のよさが充分に活かしきれていないような気がする。それとユーバンクスとスミスのプレイはこれでも充分満足するとして、ピアースのサックスはテナーでそこそこガンガンいっている4ビート曲の7曲目以外は、なんとなくフュージョン・サックスといった感じの耳触りのいいプレイをしているのがもの足りないし(特にソプラノを吹いているとき)、主にエレピを弾いているエトキンスも、コブハム・バンドのときと同様に面白さが感じられないし(9曲目のアコピでのアドリブはまあまあだけど)、カマチョのベースも無難なバッキングをしているだけで存在感が希薄なので、はたしてバンドとしてこのメンバーでいいのかなって思ってしまう。でもユーバンクスとスミスのプレイを久しぶりに聴けたわけなので、これでよしとしておくけどね。今に始まったことではないけれど、ユーバンクスに関してはエレギとアコギのどちらのプレイも素晴らしい。楽曲としては、曲中での起伏が激しくてスリリングさもたっぷりの1曲目、テーマ部分が5/4拍子基調の2曲目、アップテンポ4ビート(3/4拍子)の5曲目、同じく4ビートの7曲目、ユーバンクスとスミスがアグレッシブにデュオっている10曲目が特に気に入った。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)