Toots Thielemans / European Quartet Live

Toots Thielemans(Hamonica)
Karel Boehlee(P, Syn)
Hein Van de Geyn(B)
Hans van Oosterhout(Ds)
Rec. Live in 2006, 2007 and 2008, Holland?
(Challenge Records CHR70160)

ハーモニカの第一人者トゥーツ・シールマンス(1922年、ベルギー生まれ)のプレイでは、口笛を吹きながらギターを弾いていた「Quincy Jones/Mellow Madness(75年)」中の「Bluesette」と、「Jaco Pastorius/Word of Mouth(81年)」中の「Three Views of a Secret」が最も思い出深い。あと松岡直也との共演盤「Kaleidoscope featuring Toots Thielemans & 松木恒秀(80年)」「松岡直也 & ウィシング/Live at Montreux Festival (80年)」もリリース当時はよく聴いたし、パブロ盤の「Oscar Peterson Big Six at Montreux 1975」なんかもいきつけの喫茶店で飽きるほど聴かされた。そんなトゥーツのリーダー作を買うのは「Toots Thielemans/East Coast West Coast(94年)」以来と全然オッカケしていないし、ハーモニカ自体にもあまり興味はないのだが、80歳を過ぎても現役で活躍しているのが凄いよね。本作はカレル・ボエリー・トリオ(「Karel Boehlee Trio/Last Tango in Paris(06年、別頁あり)」)との共演盤。新譜でありながら、Amazonでなんと972円(セール価格)という信じられない値段だったのですぐに飛びついた。

「I Loves You Porgy」「Summertime」「The Days of Wine and Roses」「Round Midnight」「Les Feuilles Mortes(枯葉)」「On Green Dolphin Steet」等、よく知られた曲を中心に全12曲。大好きな「Bluesette」(トゥーツ曲)や、「Comecar de Novo」(イヴァン・リンス曲)もやっているのが嬉しい。
まずはバラード演奏による「I Loves You Porgy」での哀愁を帯びたツゥーツのプレイには、久しぶりに聴くことも相まってジンとくるのだが、切れ目なく演奏される2曲目「Summertime」における「All Blues」のパクリ的なイントロに始まり、ビートがアフロ調、4ビート、倍テンの4ビートと次第に変わっていく(拍子も1拍半ノリの6/8拍子から4/4拍子へと変化する)曲調がまた滅茶苦茶カッコよくて、もうこの2曲だけでもグーンと引き込まれる。カレル・ボエリー・トリオがこれだけ動的な演奏をしているのも国内盤(M&I)ではちょっと聴いたことがないだけに興奮してしまうのだが、バックがどのような状況になろうとも平然と吹いているトゥーツもさすがとしかいいようがない。やはりこれまでいろんなセッションに参加してきた賜物だろうね。そのプレイも、80歳を過ぎていながらも全くといっていいほど衰えを感じることがないのだから大したものだ。さすがに細かいフレーズは吹かなくなっているけれど、むしろその分ハーモニカ特有の素朴さが滲み出ていていい感じだね。3曲目「Comecar de Novo」での楽曲にバッチリと嵌っている抒情的な歌いっぷりといい、4曲目「The Days of Wine and Roses」でのこれぞ「酒バラ」といった感じのホッとするような吹き方といい、どの曲においてもハーモニカの魅力たっぷりに聴かせてくれる。それと同時にボエリー・トリオの方も、お互いがよく反応しあった有機的な演奏をしているのだから、仮にトゥーツが参加していないとしても充分に楽しめるね。ライブ盤だけあって、程よくアグレッシブで実にいい塩梅。曲によってはボエリーがシンセをストリングス代わりに、味付け程度に用いているのにも好感が持てる。
どの曲もそれなりに良いのだが、その中でもドラムスのハンズ・ヴァン・オーシュタハウトゥが大活躍している2曲目「Summertime」と、9曲目「On Green Dolphin Steet」が最高。また11曲目「Bluesette」はあまりの懐かしさに感極まる。クインシー盤では軽いボサノヴァでやっていたけれど、こちらの方は最初の部分が3/4拍子のジャズワルツ、途中からは4/4拍子にチェンジしていて、ボサノヴァのリズムもサンバよりの現代的なビートなので時代の流れを感じる。
録音は、ハイン・ヴァン・デ・ゲインのベースの音が、「Enrico Pieranunzi/Live in Paris(06年)」「Andre Ceccarelli/Golden Land(07年)」等と比較するとなよなよしていてイマイチだけど、それ以外は良く録れていて、特に得てしてきつくなってしまいがちなハーモニカの音が、非常に温かみがあってふくよかに録れているのがなによりだね。クレジットでは2006、 2007、2008年録音となっているけれど、曲ごとの音質の変化は全く感じられないし、お客さんの拍手やホール感も同様なので、私には1ヶ所でのライブのように聴こえる。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)