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エリック・ハーランド以降の若手ドラマーで大注目しているのがこのオベド・カルヴェール。正確な年齢は分からないが、All About Jazzのディスコグラフィーによると、NYのマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックを2005年に卒業しているようなので、現在27~28歳といったところだろう。在学中はジョン・ライリーに師事。学生時代の2002~04年には、すでにスティーヴ・トゥーレ・セクステットのメンバーとして活動していたようだ。
私がカルヴェールのドラミングを初めて耳にしたのは、ちょうど卒業するかしないかの年のレコーディング「Philip Dizack/Beyond a Dream(05年、別頁あり)」なのだが、記事中で「特にObed Calvaire(なんと読むのか?)のドラミングが光っている。ラルフ・ピーターソン直系って感じでとにかくパワフルそのもの(ラルフよりはくどくないしもっと上手かも)。こんなのに煽られっちゃったらフロント陣なんかはひとたまりもありません」と書いているように、もうその時代からえらく気に入っていた。それから2年後の「Eli Degibri Trio/Live at Louis 649(08年、別頁あり)」でのライブの魅力が満開のアグレッシブなドラミングはさらに感動もので、本アルバムがその年のベスト10中第6位になったのも、愛聴盤として今でもしょっちゅう聴いているのも、ひとえにカルヴェールのおかげに他ならない。その後の出会いは、今年に入ってからの「David Kikoski Trio/Live at smalls(10年、別頁あり)」だけど、これまたキコスキのカッコいいアドリブ・フレーズにカルベールが瞬時に反応していて、非常に密度の高い演奏を楽しむことができた。デニス・チェンバースら一部のテクニカル・ドラマーの間で流行している(その原点はおそらくアル・フォスター)、ハイハットを足でクローズ、ハーフオープンしながらのドラムソロも最高だったしね。さらには「Jacam Manricks/Trigonometry(10年、別頁あり)」や、これまでの一連の流れとは傾向が違いフュージョン・ドラマーになり切って叩いている「Tony Grey / Unknown Angels(10年、別好あり)」と、ここにきて多くのアルバムで名前を目にするようになったので、約2年ぶりのアップと久しぶりではあるが、「Drummer」項でもぜひとも取り上げなくてはと思った次第。その若さに満ち溢れたパンチの効いたドラミングが、私のハートをガッチリとキャッチして放さない。
カルヴェールはその他にも、ウィントン・マルサリス、ダニーロ・ペレス、ボビー・ワトソン、マーク・マーフィー、ステフォン・ハリス、ジョシュ・ローズマン、エリック・リード、バスター・ウィリアムス、クレイトン・ブラザーズと共演したことがあるようだし、ヴィレッジ・ヴァンガード・オーケストラ、ミンガス・ビッグバンド、ボブ・ミンツァー・ビッグバンドといった有名ビッグバンドにも一通り参加しているようなので、これからの活躍にも大いに期待できそうだ。

<追記>
「Kazumi Watanabe / Tricoroll」のライナーにて、1981年マイアミ生まれなのが判明した。