Ronnie Lynn Patterson / Music

Ronnie Lynn Patterson(P)
Francois Moutin(B)
Louis Moutin(Ds)
Rec. October 16-17, 2009, France
(OutNote Records OTN001)

フランソワとルイのムタン兄弟買い。2人はMoutin Reunion Quartetの新作「Moutin Reunion Quartet/Soul Dancers(10年、別頁あり)」でも相変わらず抜群のコンビネーションを見せていただけに(フランソワは一昨日聴いたばかりの「Rudresh Mahanthappa & Bunky Green / Apex」にも参加している)、本作でのプレイにも過剰な期待をしている。リーダーのロニー・リン・パターソンを聴くのはこれが初めてなのだが、本人のサイトを見てもフランスで活動中ということ以外、経歴的なものは分からないので省略する。でもロニーとかリンとかパターソンとかいう名前からして、もしかするとイギリス人かアメリカ人なのかもね。写真を見ると黒人で、年齢的にはそんなに若くはない(50歳台かな?)ような感じがする。本作が5枚目のリーダー作。前作の「Ronnie Lynn Patterson/Freedom Fighters(08年)」にもルイ・ムタンが参加していて、さらにはブログ仲間の間でもけっこう話題になった盤だというのに見逃していた。

コルトレーンの「Lazy Bird」、モンクの「Evidence」、コールマンの「Blues Connotation」、マイルスの「All Blues」「Blue in Green」やスタンダード等、全てが既成曲で全8曲。
パターソンのピアノは、右手のフレーズから左手のブロック・コードの挟み方やハーモナイズまで、ひとことで言うとスタンダーズ・トリオでのキース・ジャレットに非常によく似ている。曲によっては唸り声を発しながら弾いているし、取り上げているほとんどの楽曲もダブっているのだからなおさらだね。おそらく本人もジャレットのことを相当意識して弾いているのだと思うけど、それがまた現在のスタンダーズ・トリオではなく、結成当時のもっとスリリングだった頃のスタンダーズ・トリオをイメージさせる演奏なのだから、「Still Live(88年)」あたりまでが最高だったと思っている身としてはこんなに嬉しいことはない。トリオとしての一体感が実に素晴らしいし、スタンダーズ・トリオのような変な堅苦しさを感じさせることもなくて、三者による最高のインタープレイが楽しむことができる。それもただ単にスタンダーズ・トリオをなぞっているだけではなく、さらに密度の高い演奏となっているのだから大したものだね。おそらく現在のスタンダーズ・トリオにマンネリを感じているファンは、本作を聴けばイチコロじゃないかと思う。とスタンダーズ・トリオとの比較ばかりになってしまっているけれど、それほど良く似ているし、それ以外に本トリオを説明するのに最適な表現も見当たらないので仕方がないだろう。
初めて聴いたパターソンは過去盤も欲しくなってしまうほどに一発で好きになったし、ビル・エバンス・トリオにおけるスコット・ラファロやエディ・ゴメス、スタンダーズ・トリオでのピーコック路線のように、単なるウォーキング・ベースではなく瞬時にピアノに絡み合う対旋律的なベースを弾いているフランソワもさすがとしかいいようがないし、純粋なドラムソロは5曲目「Blues Connotation」での手叩きによるソロだけといささかもの足りないとはいえ、ピアノとベースによく絡み合ったルイの緻密かつ表情豊かなドラミングも聴き応えがタップリで、もう本作には何も文句がない。できれば本家のスタンダーズ・トリオもこういう演奏をしてもらいたいものだね。というかピーコックとディジョネットでは音楽的にもう限界だと思うので(興行面では相変わらず成功しているようだが)、いっそのことムタン兄弟が参加してしまった方がいいのかもしれない。となるとパターソンの立場はなくなってしまうかもしれないけどね(笑)。いずれにしても本作は、愛聴盤としてこれからもずっと聴き続けていきたいと思うほどに大いに気に入った。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)