Scott Colley

Scott Colley(B)
Ralph Alessi(Tp)1,2,3,4,7,8,10
Brian Blade(Ds)2,3,4,5,7,9
Bill Frisell(G)1,2,3,6,7,9,10
Craig Taborn(P)4,5,9,10
Rec. June 1 & 4, 2009, NY
(Cam Jazz CAM5036)

前作「Scott Colley/Architect of the Silent Moment(07年、別頁あり)」のところで、スコット・コリーのアルバムは全て所有していると書いたけど、本人のサイトを見てみたら、なんと「Scott Colley/The Magic Line(00年)」というのを見事に買い逃しているじゃないっすか(苦笑)。クリス・ポッター、ビル・スチュワートによる超豪華なトリオ作品だというのにね。現在はすでに廃盤になっているようで、Amazonのマーケットプレイス以外では取り扱いしていないのが悔やまれる。
本作のメンバーのラルフ・アレッシ(リーダー作の近作「Ralph Alessi/Cognitive Dissonance(10年、別頁あり)」がなかなか良かった)とクレイグ・タボーン(Chris Potter Undergroundでもお馴染)は前作から引き続きなのだが、ドラムスはアントニオ・サンチェスからブライアン・ブレイドに代わっている。それに加えてビル・フリゼールも参加しているのが非常に興味深い。ちなみに「David Binney/Third Occasion(09年、別頁あり)」には、タボーン、コリー、ブレイドの3人が揃って参加している。

全10曲がコリーのオリジナル。
前作同様に非4ビートが中心で変拍子もあったりするのだが、そのサウンドはジャケットのような牧歌的な要素が強くなっている。これはビルフリが参加していることが大きいのだが、かといってのんびりとしたサウンドというわけではなく、非常にスリリングで、場面によってはアグレッシブな展開を見せているのが私好み。やはりこれだけのメンバーなのだから、それなりにガツンとくる演奏をしてもらわないとね。そんな中において、3曲目のようなもろビルフリ色が濃厚なカントリー調の曲もあったりするけれど、ビルフリ参加とタボーン参加のトラックではそれぞれ曲調の雰囲気を変えていて(コリーとビルフリ、コリーとアレッシのデュオもあり)、比較的ゆったりしたテンポの曲が続いていても、アルバム全体を通して一本調子にはなっていないのは、さすがにベーシストのコリーならではといえるだろう。そのコリーは、例によって俺が俺がと前面には出てこないながらも、その存在感がたっぷりのホランド的なプレイ(バッキングやソロのフレーズもよく似ている)は非の打ちどころがないし、このメンバーを想定して作られたと思われる楽曲も実に素晴らしい。さすがに超一流のベーシストは格が違うって感じだね。また前作同様にソロイストとして一番多くスポットが当たっているトランペットのアレッシは、アバンギャルドなものまでも吸収しているフレーズが、決して教科書的ではなくていい。それがまた一筋縄ではいかないビルフリのギターと絶妙なマッチングを見せているのだから、なんともたまらない。さらにはタボーンもエレピを弾いているときとは一味違った陰影に富んだピアノで聴かせてくれるし、やるときには容赦なくいっているブレイドの、直感的なドラミングもさすがとしかいいようがない。
ベストトラックは、メセニーがギターシンセでぶち切れているときのように、ビルフリが途中からアグレッシブな形相を見せながら迫ってくる2曲目(7/8+9/8拍子)。ホランドは単音でシンプルに弾いているだけではあるが、最後の方ではアレッシがエフェクティブなフレーズ(生トランペットでの)でビルフリに対抗していたりして、私としてはもうこの1曲だけでも充分に満足している。それと再聴してみら、4曲目もかなりスリリングでカッコよく、特にブレイドはドラムソロを含めて神懸かりなプレイをしているね。
録音はジェームス・ファーバーが担当。これ以上はないと思ってしまうほどに、本サウンドによくマッチした音質で録れているのが最高だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)