Conrad Herwig(Tb)
Craig Handy(Ts, Ss, Fl, B-Cl)
Mike Rodriguez(Tp)
Bill O'Connell(P)
Ruben Rodriguez(El-B)
Robby Ameen(Ds)
Pedro Martinez(Per)
Guests: Eddie Palmieri(P)1,7,8 Randy Brecker(Tp)1,4,5,6,7,8
Rec. August 14-15, 2008, Live at the Blue Note, NY
(Half Note 4544)

コンラッド・ハーウィグの「ジャズの巨匠の楽曲をラテン・アレンジでやっちゃおう」シリーズは、「The Latin Side of John Coltrane(96年)」「Another Kind of Blue(04年)」「Que Viva Coltrane(05年)」「Conrad Herwig/Sketches of Spain Y Mas(06年、別頁あり)」「Conrad Herwig/The Latin Side of Wayne Shorter(08年、別頁あり)」に続き、これで6枚目になるのかな。今回もまた題材がハービー・ハンコックということで聴くのが楽しみだ。当のハンコックはグラミー賞狙いの「Herbie Hancoc/Imagine Project」をつい先日リリースしたばかりだが、そんな売れ線路線のアルバムは、私としては「Headhunters」「Thrust」「Flood(洪水) 」あたりまでで充分で、「Future Shock」以降は急激に興味を失ってしまっている。当然ながら「Imagine Project」は未購入だし、遊びで買ってみた「River (The Joni Letters)(07年、別頁あり)」も、「ああ、やっぱりな」って感じで失望している。そんなハンコックではあるも、ピアニストとしてはチック・コリアと並んで大尊敬しているし、昔の楽曲も大好きなので、本人そのものは係わっていないにしても本作の登場はとても嬉しい。
本シリーズの前作「The Latin Side of Wayne Shorter」から、メンバーはルーベン・ロドリゲス、ロビー・アミーン、ペドロ・マルチネス、ゲスト参加の御大エディ・パルミエリ以外は大幅にチェンジしているのだが、今回は特に新旧のトランペッター、マイク・ロドリゲス(ロドリゲス・ブラザーズの弟)とランディ・ブレッカーが共演しているのが興味深い。

ハンコック曲の「Oliloqui Valley」「One Finger Snap」「Butterfly」「The Sorcerer」「Actual Proof」「Maiden Voyage」「Cantaloupe Island」「Watermelon Man」で全8曲。
相変わらずホットでノリノリな演奏で、こういうラテンジャズが大好きな身としては、もう無条件で楽しむことができる。また「Oliloqui Valley」や「The Sorcerer」のような、一見ラテン化には難がありそうな楽曲までもが見事に変身しているのもさすがとしかいいようがない。実はブログを10日間ほど夏休みにしている間に、iPodに入れておいた5つ星作品ばかりを集中的に聴いていたせいか、その後はどの新譜を聴いても「これは良い」と感じることがなかったのだが、やっぱり良いものは良いね。なんといってもタダでさえカッコいいハンコックの楽曲群にラテンの風味を加えることにより、また一味違った雰囲気で聴かせてくれるのだから、こんなに嬉しいことはない。
その演奏内容はハーウィグがリーダーではあるも、俺が俺がと自分だけが目立っているのではなく、アドリブは他のソロイストにも均等に回しているのがいい塩梅。ライブだけあって各人とも素晴らしいテクニックと歌心で聴かせてくれるのだが、その中でもマイク・ロドリゲスとブレッカーの2人のトランペット奏者がお互いを意識してか、一瞬どちらが吹いているのか分からなくなるほどに似通ったフレーズで対抗しているのがいい意味で微笑ましい。また「Bill Connors/Return(05年、別頁あり)」や「Dave Valentin/Come Fly With Me(06年、別頁あり)」ぐらいでしか聴いたことがなかったピアニストのビル・オコーネルが、抜群のリズム感の良さに加えて、ハンコックばりのモーダルなコード展開にも長けていることがよく分かるし、曲により楽器を持ちかえながら吹いているグレイグ・ハンディもフレーズに派手さはないものの、なかなかいい感じで聴かせてくれる。もちろんハーウィグも終始ノリノリに吹いているし、リズム隊のルーベン・ロドリゲス、ロビー・アミーン、ペドロ・マルチネスの3人に関しても申し分がない。さらには3曲に参加のパルミエリも、風格たっぷりのプレイで楽しませてくれる。
本作は楽曲良し演奏良しなのに加えて、ライブ盤にしては録音も上々。夏休み明けの新譜聴き再開4枚目にして、ようやく4つ星に相応しいアルバムと出会うことができた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)