Steve Turre(Tb, Shells)
Billy Harper(Ts)
Larry Willis(P)
Corcoran Holt(B)
Dion Parson(Ds)
Russell Malone(G)5, 9
Pedro Martinez(Bata & Djembe)4
Rec. March 29, 2010, NJ
(High Note HCD7210)

スティーヴ・トゥーレが、マックス・ローチのバンドでやっていた時代(70年代)が懐かしいビリー・ハーパーと共演しているのが、本作の聴きどころといってもいいだろう。他のメンバーのラリー・ウィリス(1940年生まれ、70年代にはブラッド・スウェット&ティアーズにも在籍していたことがあるよう)は、わたし的には馴染みの薄いピアニストで、リーダー作は「Larry Willis/How Do You Keep The Music Playing(92年)」しか所有していない。またベースのコーコラン・ホルトを聴くのも今回が初めてだし、ドラムスのディオン・パーソンも前作「Steve Turre/Keep Searchin'(06年、別頁あり)」以外では聴いたことがない。ゲストにはラッセル・マローンが2曲に参加しているのだが、はたしてこのメンバーでトゥーレがいったいどんなことをやっているのかが興味深い。

トゥーレ曲が6曲、ハーパー曲が2曲、スタンダードの「Tenderly」で全9曲。
4ビートを中心に、アフロ的なものや8ビート等もやっている。ソロイストにベテランを配しているためか、比較的リラックスしたムードが漂っている。それがトロンボーンの特性にもよくマッチしているのだが、もう少し尖がったサウンドを期待していた身としてはイマイチ感がある。High Noteに移籍してからのトゥーレは肩の力を抜いてプレイしているような印象で、こういうのも決して悪くはないのだが(相変わらずの上手さはさすがとしかいいようがないし、1曲目や9曲目で披露しているホラ貝もユーモラスで、聴いているだけでも楽しくなってくる)、なんか全体的にサウンドが間延びしていて締りなく聴こえるので、できればもっとリズム面を強調してほしかった。ミディアム・テンポの曲が主体となっているので、せめてアップ・テンポの曲が8曲目以外にもう1曲ぐらいはあってもよかったと思う。
何十年ぶりかに聴いたハーパーは、昔のような熱血漢ぶりを部分的には垣間見せているも、加齢と共に丸くなっている印象を受ける。またウィリスのピアノはフィーリング自体はとてもいいのだが、ミスタッチがちょっと目立つかなって感じ。2曲に参加のマローンは申し分のないプレイで楽しませてくれるのだが、そのうちの8ビートの5曲目(アルバムタイトルにもなっているトゥーレ曲の「Delicious and Delightful」)は、おそらく意識的にそうしているのだと思うけど、バンドとしての演奏自体が60年代のような雰囲気なので、いささか古臭く感じてしまう。コーコラン・ホルトは可もなく不可もなくではあるが、そのパワー感のあるベースが気に入った。ディオン・パーソンは前作「Keep Searchin'」と同様に、やはりドラミングが全体的に軽め。これが容赦のないドラマーだったら、サウンドがもっとスピーディかつスリリングなものに変化すると思うのだが、トゥーレにしてみるとそんなのはこれまで散々やってきたので、あえてパーソンとやっているのかもしれない。ただしそのドラミングが間延びして聴こえる要因でもあるので、4曲目のようにパーカッションを加えてリズムを強化するなりして、今後は何らかの工夫が必要となってくるだろう。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)