Grant Stewart(Ts)
David Hazeltine(P)
Peter Washington(B)
Phil Stewart(Ds)
Rec. March 16, 2010, NY
(Birds Records XQDJ1016)

ソニー・ロリンズからの影響が大と思われるグラント・スチュワートのロリンズ集ということで、興味津々買ってみた。グラントを聴くのは「Grant Stewart/Young at Heart(08年、別頁あり)」以来なので久しぶりなのだが、たまにはこういうオーソドックスなテナーも無性に聴きたくなることがある。あとはスコット・ハミルトンとかね。ただしハリー・アレンだけは、やっている音楽にそぐわない少々メタリック臭のするテナーの音質が嫌いなこともあって(今もそうなのかは分からないが)、ここしばらくは買っていない。
本作のメンバーのデヴィッド・ヘイゼルタイン、ピーター・ワシントン、フィル・スチュワートの顔合わせによるレコーディングは、バラード集ということで未購入だった「Grant Stewart/Plays Jazz Ballads(09年、ピーター・バーンスタインも参加)」から引き続きなんだね。ヘイゼルタインとは他にも「Reeds and Deeds/Cookin'(06年、別頁あり)」や「John Swana/Bright Moments(08年、別頁あり)」で共演している。素晴らしいベースであちこちから引っ張りだこのワシントンのことは割愛するとして、グラントのアルバム以外では聴いたことがないフィル・スチュワートは、ライナーを見たらグラントの実弟だったことが判明した。

「Moritato(Mack The Knife)」「Airegin」「Alfie's Theme」「St.Thomas」等、ロリンズにゆかりの深い曲で全8曲。
原曲(元演奏)のイメージから大きくかけ離れることのない演奏が続く。なので変に身構えることなく安心して楽しむことができるのだが、聴き手としては必然的にロリンズと比べてしまうので、やっているグラント本人にしてみると、内心はけっこう気苦労があったのかもしれない。でもロリンズ集だからといっても、いつもとかわることのない朗々たる吹きっぷりで、さすがと思わせてくれるけどね。そのロリンズとも共通するおらかさや部分的な豪快さがなんともたまらない。またヘイゼルタインも相変わらずの上手さだし、ソロだけではなくウォーキング・ベースの音使いからして最高にカッコいいワシントンも同様。ただしフィルだけは、ライナーによるとビリー・ヒギンズを尊敬しているそうで、その影響下にある軽いドラミングが、本演奏ではもの足りなく感じてしまう。何せロリンズといえばマックス・ローチのイメージが強いからなぁ。その点を除いて本作はなかなかいい感じではあるのだが、できればロリンズが持ってるアクのようなものがあればもっとよかったと思う。これだとなんかサウンドの口あたりがよすぎて、聴いているうちに退屈してくるんだよね。それがリラックス感にも繋がっているとはいえ、やはり私にはCriss CrossやSharp Nineでのグラントの方が合っていることを改めて実感した。まあ現在の国内盤の肌触りのいいサウンド(全ての国内盤というわけではない)が大いに気に入っている人であれば、これで充分なのかもしれないけどね。

評価☆☆☆ (☆ 最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)