大西順子(P)
Nicholas Payton(Tp)
James Carter(Ts, As, B-Cl, Fl)
Wycliffe Gordon(Tb)
Reginald Veal(B)1, 2, 3, 5, 6, 7
Rodney Whitaker(B)1, 3, 5, 7
Harlin Riley(Ds)
Roland Guerrero(Conga)1
Rec. March 24-29, 2010, NY
(Veave-Universal UCCJ2081)

いま分かったけど、本作は輸入盤(HMV価格1,684円也)も8月23日にリリースされるんだね。国内盤の2,800円よりも1,000円以上も安いので失敗した感が強いのだが、今回は地元のレコード店のポイント交換により実質タダで入手したので、これでよしとしておこう。
復帰第一弾の前作「Junko Onishi/Musical Moments(09年、別頁あり)」もなかなか良かった大西順子だが、本人はレジナルド・ヴィール、ハーリン・ライリーのリズム隊が一番しっくりとくるとみえて、本作にはまた2人が返り咲いている。それには私も賛成だし、そのうちの4曲ではロドニー・ウィテカーとのツイン・ベースとなっているが非常に興味深い。またフロント陣もニコラス・ペイトン、ジェームス・カーター、ワイクリフ・ゴードンと個性豊かな面々が揃っているので、これは前作以上に期待できそうだ。それにしてもEMIからユニヴァーサル(Veave)に移籍した関係なのか、これまでになく艶めかしいジャケットだね。

大西のオリジナルが3曲と、スタンダードの「Stardust」、ミンガスの「Meditations for a Pair of Wire Cutters」、サー・チャールス・トンプソンの「The Street Beat」にモンクの「52nd Street Theme」を合体させた曲、ベニー・グッドマンでお馴染の「Memories of You」等で全8曲。
コンガ入りのラテンタッチな1曲目は、ビート的にもモーダル(というかワンコード的)な曲調的にも、これまでの大西のイメージとは大きく異なっていて、いきなりガツンと喰せられる。フロント陣のいい意味での容赦のない暴れっぷりも相当なものなのだが、そんな3人にもラテンのビートを張り切って叩いているライリーにも、大西が決して負けていないのがとにかく凄いね。もうこんなのを聴いてしまうと、これまでのリーダー作はいったい何だったのかと思ってしまうほどに、さらに強力なサウンドとなっている。2曲目はウィントンのジャズ回帰路線的なイントロでスタートするのだが、テーマ部ではシンコペーションを多用しているのが、いかにも「Wow」時代からの大西らしい。そのイケイケなスウィング感やグルーブはさらにカッコよく進化しているので、古くからのファンにしてみてもこういう曲は嬉しいだろう。3曲目は2人のベーシストの掛け合いからスタート。おそらく右chがヴィールで、左chがウィテカーではないかと思うけど(違っていたらごめんなさい)、ベースソロを3分以上もたっぷりと楽しませてくれるあたりに、大西のアルバム作りに対する余裕というか、懐の深さを感じる。それは全体演奏に入ってからもいえることで、決して自分のピアノだけが目立つのではなく、それ以上にメンバー各人のプレイに大きくスポットを当てている(この曲ではヴィールとウィテカーの他に、カーターとゴードン)のが実に素晴らしい。おかげでメンバーの誰目当てて本作を買ったとしても、充分に納得のいく演奏内容に仕上がっている。特にカーターに関しては、最近の自分のリーダー作以上に吠えまくっている感があるね。それでいながらやっぱり大西のピアノが一番印象に残るのは、曲の途中にバックを休みにしたピアノソロを挟んだりしているから。この辺はフロントに個性的な人を配する場合のアイデアの勝利といっていいだろう。
他の曲は省略するけれど、とにかくこれほどまでに強力かつ作編曲面においても説得力のある大西は聴いたことがない。またそれに輪をかけて録音も最高に良くて、各楽器が非常にリアルに録れているのにもかかわらず、どれだけボリュームを上げていっても全くうるさく感じることがないのは、さすがにジム・アンダーソンとしかいいようがないね。演奏も録音も文句なしに素晴らしいので、これは5つ星にしておこう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)