Renee Rosnes(P)
Steve Nelson(Vib)
Rich Perry(Ts)
Peter Washington(B)
Bill Stewart(Ds)
Rec. September 25-26, 2009, NY
(M&I MYCJ30567)

今月号(7月号)を持ってスイングジャーナル誌が休刊だそうで、日本のレコード会社にとっては今後ますます厳しい時代が到来するものと予想されるのだが、私としては内容さえよければこれからも買っていくつもりなので、より一層の奮起を期待している。そのためには制作者がジャズの現状をきちんと見据えることがなによりも重要。そうでないとガラパゴス化したケータイのように、世界の情勢から大きくかけ離れてしまうだろう。というか特定のレーベルはすでにそうなっている。
といきなり厳しいことを書いているけれど、その点本作はもうメンバーだけでもそそられる。なんといっても大好きなピーター・ワシントンとビル・スチュワートが参加しているからね。ワシントンは前作「Renee Rosnes/Black Marcissus(別頁あり)」から引き続きだけど、ビルスチュがリニー・ロスネスと共演するのはこれが初めてと思われるので(ロスネスの現在の旦那であるビル・チャーラップ繋がりなのかもね)、非常に興味深いものがある。スティーブ・ネルソンの参加は、同じM&Iのルイス・ナッシュ盤「Lewis Nash/It Don't Mean A Thing(04年)」や「Lewis Nash/Stompin' At The Savoy(別頁あり)」の流れかな。リッチ・ペリーはSteepleChaseに吹き込みが多い。

ロスネスのオリジナルが4曲と、エリントン、ジョン・ルイス、ジョビン曲他で全9曲。
オリジナルの1曲目「Mirror Image」のアドリブ部分のコード進行は、何かで聴いたことがあるのだが、それが何だったのか思い出せないのがもどかしい。それはさておき、ロスネスがこの曲でチック・コリア的なフレーズを多用しているのは、これまで経験がなかったような気がする。それは2曲目にもいえることで、こちらではオスカー・ピーターソン的な陽性なピアノを弾いてるね。もしかするとロスネスは、これまでのイメージから脱却しようとしているのかもしれない。それが今回ピアノトリオではなく、テナーやヴァイブも加えた編成にも繋がっているのだろう。そんなこともあって新鮮な気持ちで楽しめるのはいいのだが、ビルスチュが自分の持ち味を十分に発揮しているとはいい難いのが残念。シンバル・アタックによる、バシャーンという目の覚めるような音には期待しない方がいいし、ポリリズムを駆使した長めのドラムソロも6曲目でしかやっていないし(ピアノとの4バースは9曲目でもやっているが)、ドラムスの音自体も少々奥に引っ込んでしまっていて、これでは全然もの足りない。その代りといってはなんだけど、ピアノよりも大きな音で録れているネルソンのヴァイブが実にいい塩梅。相変わらずのボビー・ハッチャーソン的なクールな雰囲気を醸し出しながらのプレイではあるけれど、デイブ・ホランドのバンドのときとは違って、こちらの方ではより歌心を大切にしているので、その分温かみを感じる。もちろんホランド・バンドでのアグレッシブなプレイも大好きだけどね。ペリーのテナーは可もなく不可もなくってところかな。別にいてもいなくてもいいって感じなので、できればもっと存在がタップリなテナー奏者(例えば昔OTBで一緒だったラルフ・ボウエンとか)とやっているのを聴いてみたかった。そのネルソンとペリーは曲によっては休んでいて、ピアノトリオでの演奏がメインとなっているので、ロスネスの出番が少なく感じるといったことは特にない。女流ピアニストにありがちな、必要以上にリリカルな傾向に溺れることのないキリッとしたピアノには、いつものことながら感心する。
なんて思いながら聴いていたら、1曲目「Mirror Image」と非常によく似ている曲調のものを8曲目「Wishiful Thinking」(オリジナル曲)でもやっていて、どうやら本作で最も聴いて欲しいのはこの2曲だったようだ。アルバムタイトルこそは、もっとロマンチックな「Manhattan Rain」(4曲目、オリジナル曲)だけどね。この辺の日本人的な感覚はそろそろやめた方が、もっと多くの人に受け入れられるのではないかと思う。

評価 ☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)