Gabriel Puentes(Ds)
Chris Lightcap(B)
Leo Genovese(P,Electric Harpsichord)
Rec. August 2008, NY
(Fresh Sound New Talent FSNT362)

全然知らないミュージシャンばかりなのだが、ドラマーのリーダー作には目のない私なので、どんなものかなと思って買ってみた。ガブリエル・プエンテスはチリ生まれで、現在はメキシコを拠点に活動しているようだ。MySpaceの「影響を受けた音楽」のところに旧新のドラマーがズラリと並んでいるところを見ると、いろんなジャズやドラミングのスタイルを吸収しているような感じだね。ベースのクリス・ライトキャップは、本人のサイトが見つかったので後でちゃんと目を通しておくとして、同じFSNTから近々リリースされるリーダー作「Chris Lightcap's Bigmouth/Deluxe」がちょうど気になっていたところだったので、本作に参加しているのはグッド・タイミング。ピアノのレオ・ジェノベスはAll About Jazzによると、1979年アルゼンチン生まれ。バークリー音楽院でダニーロ・ペレス、ジョアン・ブラッキーン、フランク・カールバーグらから学び、2003年にプロとしてメジャー・デビュー。これまでにHal Crook, Darren Barrett, George Garzone, Francisco Mela, Joe Lovano, Bob Gulloti, Phil Grenadier, Dave Santoro, Chris Cheek, Ben Monderといった多くのジャズメンと共演しているようだ。彼もまたリーダー作「Leo Genovese/HaikusII(04年)」がFNSTからリリースされているのだが、この辺のFSNTの青田買い的な嗅覚は、いまさらながらだけど驚異的だね。
ちなみに本盤を購入したら、Fresh Sound New Talent All Catalog Bookという、95ページもある豪華な雑誌(CDサンプラー付き)が同包されていたのでラッキーだった。

プエンテスのオリジナルが9曲と、オーネット、モンク、ショーター、ダメロン、サム・リヴァースの曲で全17曲。
プエンテスとジェノベスの出身国から、もっとラテン的なものを想定していたのだが、それに反して完全4ビート・ジャズをやっている。ショーターの「Nefertiti」やダメロンの「Our Delight」といった暗明の雰囲気の異なる曲を、何の違和感もなく聴かせてくれるのがこのトリオの大きな特徴といえるのだが、中には1~2分ですぐに終わる即興的なフリーな曲も5曲ほどぶち込まれていたりして(曲数が異様に多いのはこのため)、なかなかシリアスな展開を見せているね。そのサウンドの肌触りは、ジェノベスが師事したというジョアン・ブラッキーンに近いものがある。どの曲もリリカルさは微塵も感じさせないキリリとした硬質な演奏で、私としてはもうそれだけでも嬉しいのだが、それに輪をかけて3人が無名のわりには相当な実力の持ち主なものだから、必要以上に音楽に入り込んでしまう。
プエンテスのドラミングは誰それ風ということもなく、ちゃんと自分のオリジナリティを持っているような感じ。最近の凄腕ドラマーたちのように決して派手ではないけれど、どんな場面においても一本調子になることなく、常になんらかのオカズを繰り出している自由度の高いドラミングには好感が持てる。それでいながら決して出しゃばることのない繊細さも兼ね備えていて、これだったらドラムスが前面に出てくるようなピアノトリオ演奏に拒否反応を示すような方であってもそれなりに楽しめるのではないかと思う。といっても楽曲自体がヤワではないので、もうそれだけでもダメだという人はいるかもしれないけどね。まあその辺は人それぞれということで。
そんなプエンテスのドラミングに、ジェノベスのピアノもライトキャップのベースも非常に相性がよくて、 2人ともフリーからオーソドックスな演奏まで、どのような展開になったとしてもその場面にバッチリと嵌った最上のプレイをしているのには感心する。ジェノベスのテクニックが素晴らしいのは、アップテンポの13曲目(リヴァースの「Cyclic Episode」)における高速フレーズを聴くと一目瞭然だし、ライトキャップのベースも存在感がすごくあって、その芯のある力強い奏法(昨日聴いたジェラルド・バートチーニとは正反対)がなんともたまらない。これは「Chris Lightcap's Bigmouth/Deluxe」の方もぜひとも聴いてみたいという気にさせてくれるね。そんな3人による、「Simple」というアルバム・タイトルのイメージとは程遠い、丁々発止な演奏が繰り広げられている。また2曲で使用しているエレクトリック・ハープシコードの音色が、サウンド上のいいアクセントになっているね。
それにしてもCDプレーヤーを替えた関係かもしれないけれど、FSNTにしては録音がやけに良く感じる。ピアノはそれほどでもないけれど、特に10曲目の手叩き主体のドラムスの音は鳥肌ものだね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)