John McLaughlin(G)
Gary Husband(key,Additional Drums,Per,Ds)
Etienne M'Bappe(B)
Mark Mondesir(Ds,Additional Drums)
Rec. November - December 2009,Monaco
(Abstract Logix ABLX027)

DVD作品「Jon McLaughlin 4th Dimension/@ Belgrade Live(別頁あり)」が最高にカッコよかったジョン・マクラフリン&4thディメンション初のスタジオ録音盤なのだが、本作ではベースがドミニク・ディ・ピアッツァからエティエンヌ・ムバペ(?)という、名前には記憶がないけれどザヴィヌル・シンジケートにも参加(「Joe Zawinul/Face and Places(02年)」 )したことがある人に代わっているんだね。ムバペの経歴はいまいちハッキリしないのだが、Amazon UKで2枚のリーダー作「Etienne M'Bappe/Misiya(07年)」「同/Su La Take(08年)」(ベースの他に歌も歌っている)が見つかったので試聴してみたら、どうやらリチャード・ボナと同じくアフリカ出身のベーシストのようだ。

全6曲がマクラフリンのオリジナル。
ベースがピアッツァからムバペに代わっているものの、基本的な音楽路線は「@ Belgrade Live」と特に変わりはなく、相変わらずテクニカルかつハードな演奏が繰り広げられている。マクラフリンの例によってのこれでもかというぐらいの速弾き(連射)にはとにかく圧倒されっぱなしなのだが、それにしてもこの人はいくつになっても衰えを知らないどころか、さらにフレーズが高速化しているし、楽曲もますますハードな方向に向かっていて、いったいどこまで自己への挑戦をすれば気が済むんだろうね。そんな崇高な姿勢にはいまさらながら感服する。また他のメンバーも相当気合が入っていて、スタジオ録音だからといって演奏がこぢんまりしてしまうことなく、ライブと同様に容赦なくガンガンいっている。気になるのは新加入のムバペのベースだと思うけど、さすがにこのテクニカルなバンドに参加できただけあって、これまでのアドリアン・フェローやピアッツァと比較しても遜色のないテクニックでその凄さを見せつけてくれる。タイプとしてはジャコの進化形といったところかな。リーダー作は音楽的に全く肌に合わないけれど、ここでのプレイは一発で気に入った。またハズバンドも実に素晴らしいサポートをしているし、モンデジールに至っては全般的にマクラフリン以上によく目立っている。彼がここまで異様に張り切って叩いているのは、マクラフリンに触発されてということもあるけれど、それ以上にメンバーの中に同じドラマーでありながらもピアニストとしての顔も持っているハズバンドに対して強烈なライバル意識を燃やしているからだろう。場面によってはハズバンドもコンパクトなドラムセットで、逆にモンデジールに対抗しているのだからなおさらだね。
もうどの曲も凄いとしかいいようがないのだが、それにしても5曲目だけがちゃんとトレースできなくて、10ヶ所以上で音がブチっと途切れてしまうのはいったいどうしたんだろう。かけ直しても全く同じ個所で途切れるので、CDの盤そのものが不良品なのかなと思ってパソコンでも試してみたけれど、こちらの方は異常なし。ということはCDプレーヤーがきちんと信号を読み取れていないということなんだろうね。せっかくウハウハ状態で楽しんでいたのに、このエラーのせいで一気に興醒めしてしまった。
そんな問題はあるにしても、マクラフリンのここ数作品(DVDを除く)の中では本作が一番気に入った。もちろん文句なしの5つ星なんだけど、コンテンポラリーな作品としては「TaucherWendtThier-Trio(別頁あり)」が滅茶苦茶凄かったので、残念ながら今年のコンテンポラリー・ジャズ部門のベスト1にはならないと思う。トータルの演奏時間はわずか40分。でもハードな演奏でこれ以上やられると腹いっぱいになってしまう可能性もあるので、これぐらいでちょうどいいのかもね。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)