Mark Egan(Fretted and Fretless Basses)
Bill Evans(Ts,Ss)
Mitch Forman(Ksy)
Vinnie Colaiuta(Ds)
Roger Squitero(Per)
Rec. June 15-17, 2009, NY (Wavetone Records WT8642)

マーク・イーガンはパット・メセニー・グループやエレメンツ以来、なにかとダン・ゴットリーブとコンビを組む機会が多く、前作「Mark Egan/As We Speak(別頁あり)」を含むこれまでのリーダー作はほとんどがそうだったし、「Kurt Weil/Moving Foaward-Reaching back(別頁あり)」等にも2人揃って参加しているのだが、本作ではヴィニー・カリウタが叩いているのが聴きどころの一つとなっている。他のメンバーのビル・エヴァンスはエレメンツ時代からの仲間。昨年リリースされた「Bill Evans/Vans Joint(別頁あり)」には、逆にイーガンが参加している。またミッチ・フォアマンも「Mark Egan/Mosaic(85年)」や「Mike Stern/Upside Downside(87年)」で共演歴がある。ロジャー・スキテロは馴染みの薄いパーカッショニスト。自己ブログで検索したら「Ron Carter/Dear Miles,(別頁あり)」「Bill Evans/The Other Side of Something(別頁あり)」に参加しているのが見つかった。

イーガン曲が9曲、フォアマン曲が1曲、その他1曲で全11曲。
前作「As We Speak」では4ビートジャズをやっていたのだが、こちらの方は典型的なフュージョン。とはいえカリウタが参加しているので、これまでとはサウンドが一味違っている。なんというか、より一段とリズムが強力になっているような感じだね。楽曲的にはビル・エヴァンスの一連のアルバムに近いものがある。またトータルサウンドを重視した緻密な曲作りではあるも、必要以上にはカチッとしていないのがいい塩梅。ただしミディアム・テンポの曲が大半なので、どの曲も似通った感じに聴こえてしまうのが残念。でもこの傾向はエレメンツの時代からほとんど変わっていないので、きっとイーガンが最も好きなテンポということなのだろう。フレッテッドであれフレットレスであれ、確かにイーガンのベースはよく歌っている。曲によってはベースラインにメロディー(ソロ)パートをオーバーダブしていて、自分が主役だということをより強くアピールしているのだが、それが決してくどくは感じないのが彼のいいところだね。エヴァンスは、部分的にはかなりアグレッシブなテナーといい、爽やかなソプラノといい、普段と同じ感覚で吹いているのだが、それがイーガンの音楽性ともよくマッチしている。フォアマンは一昨日聴いた「Anthony Jackson, Yiorgos Fakanas/Interspirit」ではバンドの編成上控え目なプレイだったのだが、本作では本領を発揮していてガンガン前面に出ている。バッキングはカラフルだし、アドリブもイケイケで、こんなに良いフォアマンはなんか久しぶりに聴いたって感じがするね。カリウタは「C. Corea&J. McLaughlin/Five Peace Band Live(別頁あり)」「Jeff Beck/Live at Ronnie Scott's(別頁あり)」あたりと比較するとシンプルな方ではあるが、それでも彼の参加がバンドに大きな活力を与えているし、4、7、10曲目では手が付けられないほどにカッコいいソロを披露していて、それなりの満足感はある。スキテロはいるのかいないのか分からないぐらい目立っていないけど、コンガ中心のプレイがいいアクセントにはなっている。
私としては、エレメンツも含むこれまでのイーガンのアルバムの中で本作が一番好き。ゴッドリーブも決して悪くはないのだが、やはりドラムスがカリウタだということが大きいね。彼のおかげで、イーガン・サウンドのどことなく間延びした感じが希薄になっている。

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