Antonio Hart(As,Fl)
Chris Potter(Ts,Ss)
Gary Smulyan(Bs)
Alex "Sasha" Sipiagin(Tp,Flh)
Robin Eubanks(Tb)
Steve Nelson(Vib,Marimba)
Dave Holland(B)
Nate Smith(Ds)
Rec. January 7-11, 2009, NY, Live at Birdland (Dare2 Records DR2-004)

これまでの Dare2 Records盤は確か普通のプラケースだったと思うけど、パッケージにもエコの波が押し寄せているのか、本品は薄っぺらな紙ジャケ仕様となっている。どうも最近はこんなのが増えてきて(先日聴いた「Randy Ingram/The Road Ahead」もそうだった)、CD棚にしまった後は探すのが大変だ(苦笑)。
バードランドにおけるライブ盤の本作のメンバーは、前作「Dave Holland Sextet/Pass It On(別頁あり)」とは違い、またスティーヴ・ネルソンとネイト・スミスが復帰しているんだね。ホランドのバンドはピアノレスが基本なので、「Pass It On」でのマルグリュー・ミラーは臨時的な参加だったとしても、エリック・ハーランドに関しては「The Monterey Quartet/Live at the 2007 M.J.F(別頁あり)」でもホランドと最高のコンビネーションを見せていただけにちょっと残念。でもスミスもこのバンドとは相性がバッチリだけどね。他のメンバーもホランド・バンドの常連ではあるが、今回はビッグバンドでもクインテットでもなく、オクテット(8人)編成なのがミソとなっている。

ホランド曲が5曲、クリス・ポッター曲が1曲、アレックス・シピアジン曲が1曲で全7曲。
いつもと変わらぬホランド・ワールドが繰り広げられている。でもライブだからといって、演奏が特に熱くなっているわけでもないんだね。もしかするとネルソンのヴァイブがクールさを醸しているので、そのように感じるのかも。なんて思いながら聴いていると、2曲目のアントニオ・ハートのアドリブでは形相が変わり、ここまで叩き足りない感のあったスミスが途端に活気づいてくる。こうなるとChris Potter Undergroundでも一緒で、お互いに気心が知れているクリス・ポッターのアドリブ部分ではさらに凄いことになっているだろうなと期待に胸が膨らむのだが、こちらの方は大人しめな3曲目でソプラノを吹いていることもあって、特にどうということはなかった(苦笑)。でもテナーに持ち替えている4曲目や7曲目では、ビート的な制約はありながらもそれなりにアグレッシブではあるけどね。ということでメンバー全員がそれぞれに自分の持ち味を充分に発揮していて、その個性の違いやテクニックの素晴らしさを堪能できるといった、非常に聴き応えのある演奏内容となっている。オクテットではありながらも、決して暑苦しくは感じさせないアンサンブルやハーモニーの持っていき方も見事だし、曲によっては変拍子の嵐なのにもかかわらず字余り的な感じはしなくて、ごく自然に聴かせるあたりもさすがとしかいいようがない。まあこれだけのメンバーが揃っているので、演奏が良くて当たり前といってしまえばそれまでだけど、それにしてもいつの時代も頑固一徹に自分のやりたいことを貫き通しているホランドの音楽性は大したものだね。それだからこそこんなにも凄いメンバーが彼の元に集まってくると思うのだが、たとえどんなに難解で玄人受けしかしないようなサウンドであったとしても、このようにライブでお客さんが歓喜している状況に接すると、どこかの国に見受けられるスタンダード偏重主義の、まるでリスナーを小馬鹿にしているとしか思えないようなアルバム作りにはなおさら反感を覚えてしまう。業界関係者は、ジャズはなんでもありの自由な音楽だということを、こういうのを聴いて再認識してほしいものだね。

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