David Binney(As)
Wayne Krantz(G)
Jacob Sacks(P)
John Escreet(P)1,7,9
Eivind Opsvik(B)
Dan Weiss(Ds)
Rec. November 2, 2009, NY (Criss Cross 1322)

ACTレーベルの「David Binney/Balance(02年)」以来のデヴィッド・ビニーとウェイン・クランツの共演盤。クランツはこれがCriss Cross初吹き込みとなる。
二人以外は馴染みの薄いメンバーなのだが、ピアノのヤコブ・サックスはビニーの過去盤「David Binney/Bastion of Sanity(別頁あり)」に、またドラムスのダン・ワイスも同作や「David Binney/Cities and Desire(別頁あり)」に参加している。もう一人のピアニストのジョン・エスクリートは今回が初体験だけど、リーダー作「John Escreet/Consequence」には逆にビニーが参加しているんだね。ベースのアイヴィン・オプスヴィク(?)は、トニー・マラビーの「Tony Malaby/Paloma Recio(別頁あり)」で弾いていた人。「Eivind Opsvik/Overseas(02年)」「Overseas? (05年)」「Overseas?(08年)」等、ベーシストとしては多くのリーダー作があるのだが、それらや近々リリースされるダン・ワイスの「Dan Weis/Timshell」のピアノはヤコブ・サックスだったりして、これでメンバー間の横のつながりがいろいろと見えてきた。

ビニーのオリジナルが4 曲、ショーターの「Toy Tune」「Teru」、サム・リヴァースの「Fuchsia Swing Song」、モンクの「Think of You」、コルトレーンの「Africa」で全9曲。
変拍子もありの16ビート曲と、4ビート曲がバランスよく配列されている。クランツはそのうちの16ビート曲と、ラストの4ビート曲「Africa」に参加。アドリブ以外の部分では控え目ながら、いざ自分の出番ともなるといい意味での変態ぶりを発揮していて、それが本作の聴きどころの一つとなっている。もちろん一番の聴きどころはビニーの感情の赴くままに吹いているアルトなのだが、なんかこれまでのような暗めで重苦しい雰囲気が消え失せていて、本作でのビニーは実にいい塩梅。これには楽曲的なことと、共演者に同じサックス奏者がいない分、いくぶん肩の力を抜いて吹いていることも関係しているのだろう。他のメンバーもなかなかの好プレイで、スコット・コリーとブライアン・ブレイドの強力なリズム隊が参加していたMythology Recordsからの前作「David Binney/Third Occasion(別頁あり)」あたりと比較しても決して引けを取らない聴き応えのある演奏内容となっている。中でも8曲目の「Think of You」が、テーマ後にいきなりドラムソロにしたりして、モンクの楽曲共々ユニークだね。でもベストトラックはなんといっても約14分の大作「Africa」だろう。ビニーは当然として、クランツやエスクリートのぶち切れ具合も、バックで異様に盛り上がっているワイスのドラミングも相当なもの。私としてはこの2曲にアップテンポの4ビートの6曲目「Fuchsia Swing Song」を加えた3曲だけでも、本アルバムを買ってよかったという気になっている。それらと比べると、16ビート曲の方の印象は薄い方。といってもどの曲も演奏自体はけっこうガンガンくるけどね。ビニーと仲のよいクリス・ポッター率いる「Chris Potter Underground」等、この手の音楽をやっているバンドはいっぱいあるので、もしかするとただ単にそのように感じるだけなのかもしれない。いずれにしても16ビートと4ビートの演奏が混在していながらも、どの曲も全く違和感なく聴かせてくれるのには感心する。またアルバムごとに趣向を変えているビニーの音楽に対する貪欲さも大したもの。きっと本人はいろんな構想をまだまだいっぱい持っているのだろう。
私としてはビニーのアルバムの中で本作が一番気に入った。録音に関しても、これまでのCriss Cross盤と比べてやけに音が良いと思ったら、いつの頃からかエンジニアがマイク・マルシアーノ(長年携わっているマックス・ボールマンはミキシングを担当)に代わっていたんだね。

評価 ☆☆☆☆ (☆ 最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)