Carl Allen(Ds)
Rodney Whitaker(Ac-B,El-B)
Vincent Chandler(Tb)
George Colligan(P,Rhodes)
Vincent Herring(As,Ss)
Rodney Jones(Ac-G,El-G)
Brandon Lee(Tp)
Dorsey“Rob”Rovinson(B3,P)
Kirk Whalum(Ts,Ss)
Rec. 2008(?),NY (Mack Avenue MAC1045)

「Carl Allen & Rodney Whitaker/Get Ready(07年、当方未所有)」に続くカール・アレンとロドニー・ウィテカーのコンビ作品。その原点は「Rodney Whitaker Qt/Winter Moon(04年)」あたりかな。近年のカール・アレンのドラミングが元気がないように感じていることは、ドラマー項「Carl Allen」や彼が参加している諸作品のところで何度も書いているとおりなのだが、本作には大好きなジョージ・コリガンとヴィンセント・ハーリングが参加しているのですぐに飛び付いた。ただしスムースジャズの雄カーク・ウェイラムまで参加しているのがちょっと気になるところだけどね。

アレン曲が3曲、ウィテカー曲が1曲と、マーヴィン・ゲイの「What's Going On」、レノン&マッカートニーの「Eleanor Rigby」他で全10曲。
曲によってメンバーが入れ替わり立ち替わりの演奏となっている。1曲目はカーク・ウェイラムを大フィーチャーしたカルテット演奏。私はウェイラムの音楽性が好きではないのでついつい厳しい目で見てしまうのだが、こういう4ビートをやっているときのアドリブの切り口はやっぱりジャズ的ではないんだね。先輩格のグロヴァー・ワシントンJr.やアーニー・ワッツ等の場合はもろジャズになるんだけどなぁ。ジャズ(4ビート)からはスタートしていないということかな。おそらく本作の「売り」の一つはウェイラムの参加だと思うけど、このスムースジャズ的な吹き方が、いささか線の細いテナーの音質と共に気に入らない。まあコルトレーンやロリンズといったテナーの巨匠達のカラーに染まっていない分、逆に新鮮に感じる方もいるかもしれないけどね。その辺は人それぞれということで。 2曲目はメンバー全員が参加している軽い16ビート曲。ここでも中盤からウェイラムが大活躍しているが、さすがにこういうビートだと本領を発揮していて実に生き生きしているね。これだったらソウルフルでなにも文句はない。ただしアレン&ウィテカーのバンドがこういう曲調のものをやっていること自体には問題がありそうな気がする。ウィテカーなんかはエレベを弾いちゃっているしね。3曲目でようやく私のツボに嵌るような本格的なジャズ演奏をしていて、コリガンとハーリングとヴィンセント・チャンドラーとウィテカーとアレンがなかなか聴き応えのあるアドリブを取っているし(特にアレンのソロは久々に気合が入っている)、4曲目のバラード風な曲におけるウェイラムのソプラノも悪くないし、5曲目は「What's Going On」で、これはこの曲をやっていること自体が嬉しいのだが(といっても2曲目と同様にこのバンドでやる意義はないような気がするが)、結局本作はいろんなジャズのスタイルを多くの人たちに楽しんでもらおうというのが目的なんだろうね。ジャズ初心者はこういうアルバムから入った方がジャズを理解しやすいのかもしれない。ただしブラスのアンサンブルでけっこう雑な部分があるので(特にトランペットがイマイチ)、これよりだったら他に良いアルバムがいっぱいあると思うけどね。そういうのを探し当てる嗅覚のようなものを養うこともジャズ道の一つなので、他人の意見にばかり左右されるのではなく、ぜひとも自分の力で探し出してみてほしい。なんて偉そうなことを書いてしまってすみません(苦笑)。
ということで比較的聴きやすい感じの作品に仕上がっている。中にはピリッとした曲もあるし、アレンは3曲目の他に、6曲目「Eleanor Rigby」や8曲目(コリガンのモーダルなピアノがカッコいい)でもキビキビとしたドラムソロを取っているので、私としては1曲目を除いてはそれなりに楽しめた。9曲目では珍しく(でもないか)ウィテカーのアルコ・プレイも聴くことができるしね。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)