Jan Lundgren(P,Rhodes)
Mattias Svensson(B)
Zoltan Csorsz Jr.(Ds,Per)
Rec. October 2-7,2008,Italy (ACT 9482)

「Jan Lundgren/Magnum Mysterium」「Paolo Fresu-Richard Galliano-Jan Lundgren/Mare Nostrum」(2枚とも当方未所有)に続くヤン・ラングレンのACTレーベルからの新作。アルバム・タイトルからして、おそらく97年リリースのヒット作「Jan Lundgren/Swedish Standards」の続編的な作品なのだろう。久しぶりにベースのマティアス・スベンソン(1972年スウェーデン生まれ、初リーダー作「Mattias Svensson/Head Up High」が近々リリースされるようだ)が復帰しているのが嬉しい。最近のラングレンはイェスパー・ルンゴー、アレックス・リールとのレコーディングが多くて(2007年にはこのメンバーで我が町にもやってきた)、それはそれでとてもいいのだが、ちょっとマンネリ気味なところもあったからね。ドラマーのソルタン・チョースJr(?、1976年ハンガリー生まれ)は初体験なのでネットで調べてみたところ、どうやらThe Flower Kingsというスウェーデンのプログレッシブ・バンドの一員だったよう。プログレをやっている人は基本的にテクニカルなので、これはそうとう期待できそうだ。といってもヨーロピアン・スタンダード集ということで、ドラマーが活躍していない甘口な作品の可能性もあるけどね(苦笑)。

ドイツ、フランス、イギリス、ハンガリー、スイス、スペイン、イタリア、ポーランド、オーストリア、スウェーデンからの選曲で全13曲。有名どころではミシェル・ルグラン「風のささやき」、フランシス・レイ「男と女」、レノン&マッカートニー「Here,There And Everywhere」、クルト・ワイル「September song」等をやっている。
いきなり軽快な8ビートでのスタートで(しかもベースに大きくスポットが当たっている)、最近のラングレンのアルバム作りとはだいぶイメージが違う。曲によってはエレピも弾いているしね。もちろん彼の本質は何ら変わることがないので、ルンゴー、リールとのトリオに馴染んでいる方であってもそれほど違和感なく楽しめるのではないかと思う。ただしいつもよりも8ビート系の比率が高いので、ジャズは4ビートでなければ面白くないと思っている方にしてみれば不満に感じるかもしれない。私としては新鮮でむしろいい塩梅なのだが、1曲の演奏時間が短い(平均で4分半)のがいささか物足りない。まあ演奏が簡潔な分、美味しい部分がギュッと濃縮されてはいるけどね。
ラングレンは曲によってはボブ・ジェームスを連想する。特に1、2曲目や、エレピを弾いている7、9曲目にそれが顕著なのだが、それはフレーズ的にどうこうということではなく、雰囲気的に似ているだけの話なので勘違いのないように。楽曲がらいかにも「北欧の貴公子」的なリリカルなプレイが目立つものの、決して甘口になりすぎることはないので、ハードな演奏が大好きな私であってもすんなりと受け入れることができる。スベンソンを聴くのはおそらく「Jacob Karlzon Trio/Today(02年)」以来だと思うけど、非常に存在感のあるベースでトリオをリードしているのが素晴らしい。さすがにヨーロッパのベーシストだけあって音程は正確だし、比較的軽いタッチのわりにはなよなよしていないベースの音質も超気持ちいい。ベースソロも聴き応えがあるね。本作で一番期待していたのは初めて聴くチョースJrなんだけど、その叩きすぎず叩かなさすぎずの嫌みのないドラミングには好感が持てる。8ビート系のリズムであってもちゃんと表情を付けていて有機的だし、4ビートも本格的なジャズドラマーと比較してもなんら遜色がない(オーバーダブによるパーカッションの小間物は必要なかったと思うけど)。というか元々はジャズドラマーなのだろう。これはモーテン・ルンドあたりの強力なライバルとなりそうだね。彼のことは今後も注目してみようと思う。
親しみやすい楽曲が中心ではありながらも、ちゃんとスパイスを効かせて演奏しているのがさすがだし(特にセカンドライン風なリズムでやっている「男と女」が最高に気に入った)、それ以上に録音が異常に良いね。音に立体感があって、倍音や濁り成分までがきちんと捉えられているピアノが耳元までドーンとせり出してくるのは先日聴いた「Jack DeJohnette/Music We Are」と同様だけど、こちらの方はそれに加えてベースとドラムスも非常にリアルに録れている。それでいながら耳障りな音が一切しないのが素晴らしい。各楽器のバランスも最高だしね。ピアノトリオは優秀な録音が多いのだが、本作は群を抜いているんじゃないかな。といってもどんな音を良しとするのかは個人個人で考え方が違うと思うけどね。私としてはもうこの音の良さだけでも大満足している。演奏としては4つ星なのだが、これは奮発して5つ星にしておこう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)