David Binney(As)
Craig Taborn(P)
Scott Colley(B)
Brian Blade(Ds)
Ambrose Akinmusire(Tp),Brad Mason(Tp,Flh),Corey King(Tb),Andy Hunter(Tb)
Rec. December 4-5,2008,NY (Mythology Records MR0006)

デヴィッド・ビニーはトンガリ系のアルト奏者。聴き始めた頃はいまいちピンとこなかったのだが、ここ何作品かで好感度はグーンと増している。これまではACTやCriss Crossへの吹き込みが多いイメージだったが、今回はMythology Recordsというあまり聞いたことのないレーベルからのリリース。と思っていたら本人のサイトに載っている「Welcome to Life(98年)」「David Binney-Chris Bowman/Bow and Quartet ep(06年?)」「David Binney/Out of Airplanes(06年?)」「David Binney/Echo Paek(08年)」(4枚とも当方未所有)等も、どうやらMythology Recordsからのような感じだね。
本作のメンバーであるクレイグ・タボーン、スコット・コリー、ブライアン・ブレイドは、ビニーとは過去作品でも共演している間柄。そんな4人を核として、「David Binney,Edward Simon/Oceanos(別頁あり)」等と同様に、ホーンセクションを加えて音に厚みを持たせたサウンド作りとなっている。

全9曲がビニーのオリジナル。
非4ビートが主体。いかにもビニーらしい内省的なサウンドではあるが、今回は楽曲自体にストーリー性のある、陰影や起伏に富んだ演奏が展開されている。味付け程度に部分的に出現するブラス・アンサンブルがとても効果的なのだが、スモール・ビッグバンド的というよりは、サウンド自体はどちらかというとクラシックのような肌触り。といってもコリーとブレイドがリズム隊なので、演奏そのものは非常にダイナミックで躍動感に満ち溢れているけどね。でないと2人とやっている意味がない。中でも4曲目は途中からフリーフォームにまで突入したりして実にアグレッシブ。
ビニーはバンドとしての調和を重視しているためなのか、少々トンガリ度が薄れているような気がしないでもない。もちろんやるときにはここぞとばかりに息継ぎの間隔を長くして速いパッセージ等で攻めまくってはいるのだが、全体的にもっとガンガン羽目を外してもよかったと思う。その代りといってはなんだけど、ブレイドが神経の張りつめた非常に緊張感のあるドラミングをしている。ソロイストに絡み合いながら、浮いてしまわない程度に終始ドラムソロを取っているような印象で、何らかの定型ビートを刻んでいることはほとんどないのがとにかく凄い。きっとよほど気合が入っていたのだろう。それはコリーにもいえることで、一旦楽譜から離れるといきなり牙をむいてくる。4曲目や6曲目のソロも聴きもの。またアドリブの出番は比較的少ないものの、タボーンのモーダルなピアノもこのバンドにはよく合っている。この人は「Chris Potter Underground/Follow The Red(別頁あり)」ではローズを弾いていたけれど、あれと比べると本作でのプレイは全くの別人のように聴こえる。まあやっている音楽が根本的に違うので、当然といえば当然かもしれないけどね。
アルバムごとに趣向を変えてくる感のあるビニーだけど、本作が一番シックリくるかな。この重厚な雰囲気がなんともたまらないで。あと一歩のところで5つ星には及ばなかったけれど、ポイント自体はかなり高いです。
それにしてもこの紙ジャケット。折りたたみだというのにプラケースの1/3ぐらいの厚さしかなくて、きっとCD棚に入れた途端に迷子になってしまうだろうなぁ(苦笑)。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)