Diana Krall(Vo,P)
Anthony Wilson(G)
John Clayton(B)
Jeff Hamilton(Ds)
Paulinho Da Costa(Per)
and The Orchestra
Rec. 2008(?),CA (Verve 1243302)

女性ヴォーカリストで唯一オッカケしているダイアナ・クラールなのだが、最近はどうもサウンドがマンネリ化しているような気がする。ジャケットの各曲ごとのクレジットを見ていて、今回こそはコンボ作品かと一瞬期待したけれど、右側のページを見たらやっぱりオーケストラ入りなんだね。前作「Diana Krall/From This Moment On(別頁あり)」のような本格的なビッグバンド(Hamilton Jazz Orchestra)との共演であれば一向に構わないのだが、またストリングス入りのクラシカルなオーケストラに逆戻り。きっとトミー・リピューマがプロデュースしている限りは、いつまでもこういうアルバム作りが続くということなのだろう。しかも今回はボサノヴァ&バラード作品ということで、ますます私の嫌いな方向に行っているしね(苦笑)。クラールが本当にやりたいことをやっているのであればそれでいいのだが、どう考えても彼女の本質とは違うような気がするんだなぁ。それは同じような路線を歩んでいるイリアーヌにもいえること。まあこういう作品の方が一般的によく売れるとは思うけどね。

「イパネマの娘」等のジョビン曲が3曲と、バカラックの「Walk On By」やスタンダード他で全12曲(2曲のボーナス・トラック含む)。
いつもとは違い、なんかよそ行きの声で歌っているように聞こえる。おそらくボサノヴァ&バラード集という作風に合わせて、ボリュームを抑えてソフトに歌っていることが原因なのだろう。わざとらしくてどうにも好きになれないのだが、可愛い子ちゃんぶっている高域が特に耳障り。クラールの魅力は、男性的である意味ドスの効いた感じの中~低域に若干のハスキーさが絶妙にマッチしているところにあると思っていたのだが、そんな美味しい部分が本作では全くといっていいほど消え失せてしまっているのが残念だね。
そんなクラールのヴォーカルには目をつぶるとして、ボサノヴァやバラードそのものが美化されていて、似たような雰囲気の曲調やテンポばかりが続いているのも退屈極まりないし(アレンジはクラウス・オガーマンが担当)、ピアノのアドリブもまるでカクテル・ピアノのようにポロンポロンと弾いていてさっぱり面白くない。今回の作品は企画からしてきっと私には合わないだろうとは予想していたけれど、ここまで酷いとは思ってもみなかった。はっきりいってBGMとしても聴く気がしないっす(苦笑)。
「Love Scenes(97年)」の頃のような、ヴォーカルにしてもピアノにしても思いっきりスウィンギーなクラールはいったいどこに行ってしまったのかなぁ。本人の心境が大きく変化したというわけではないと思うので、次回作はぜひともそういうのをお願いします。

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