David El-Malek(Ts,Ss)
Yoann Loustalot(Tp)
Thomas Savy(Ts,B-Cl)
Eric Dufay(Cor)
Denis Leloup(Tb)
Didier Havet(Tb,Tuba)
Jules Bikoko Bi Njami(B)
Daniel Garcir Bruno(Ds,Per)
Rec. November 20-22,2007,France (Nocturne NTCD4513)

近作としては「Pierre De Bethmann/Ilium Quintet(別頁あり)」「Baptiste Trotignon・David El-Malek/Fool Time(別頁あり)」「Andre Ceccarelli/Golden Land(別頁あり)」でのプレイが印象的だったデヴィッド・エル・マレク(1970年、フランス生まれ)。私が彼を知ったのは「David El-Malek/Talking Cure(03年)」からなのだが、本人のサイトを見るとそれ以前に「Live au Café des Art (99年)」「Organza (01年)」がリリースされているんだね。そういえば「Organza」の国内盤が2007年にリリースされた時に、新譜と勘違いして注文しそうになったのを覚えている。まあ買っておいて損はない作品だとは思うけどね。
本作には相棒的な存在であるピアニストのピエール・デ・ベスマンやバプティスト・トロティニョンが参加しておらず、ホーン陣にベースとドラムスといったコード楽器レス編成となっているのが興味深い。メンバーは全然知らない人ばかりだが、もしかすると幼少期を過ごしたというイスラエルのミュージシャンが参加しているのかもしれないな。ジャケットの六芒星のマークからしてなんかそんな感じがする。

全16曲がエル・マレクのオリジナル。
いきなり中東風なメロディーだったり、よく見たら演奏時間が4分以下の曲が10曲(うち1分台のが5曲)もあったりして、純粋な4ビートジャズの感覚からはだいぶかけ離れている。サウンド的にはECMのヤン・ガルバレクをもっとホットにした感じとでもいえば分かりやすいかな。あるいはHMVのコメントにもあるようにチャーリー・ヘイデンのリベレーション・ミュージックとかね。基本的にはエル・マレクの一人舞台で、主な曲構成としてはスモール・ビッグバンド的な重厚なホーン・アンサンブル(曲によってはストリングスも入っているように聴こえる)をバックに朗々と、時にはガンガン吹きまくるといった図式となっている。とはいえアドリブ自体はそんなに長くはないし、中にはトランペットやトロンボーンやバスクラにもスポットを当てている曲があったり、エル・マレクとベースとパーカッションだけのトリオ演奏もあったりして、聴いていても飽きがこないような工夫がちゃんと施されているあたりはさすが。ビート的にもけっこう変化に富んでいるしね。組曲風の構成なのだが、異常に短い曲は次の曲のイントロ的な扱いとなっているので、全体的には曲が短いといったことは全く感じない。それどころかこの静あり動ありの素晴らしい曲構成にはついつい引き込まれてしまう。異国情緒たっぷりなサウンドもグッドだしね。なんといったらいいか、一口でいうと非常にノリのいいクラシックを聴いているかのような印象。だからといってサウンドは決してヤワなものではなく、その根底には情熱が漲っている。聴きどころはなんといってもエル・マレクのサックスだろう。テナー、ソプラノともにそのテクニックと感性の素晴らしさを十分に見せつけてくれる。
エル・マレクにしては異色作ではあるけれど違和感なく楽しめる。同じ中東風のサウンドであっても、一時期のベースのアヴィシャイ・コーエンのような癖のあるやつよりは、こちらの方が私には合っている。アルバムとしての完成度も高いし、温かく録れている録音も最高。トータル52分に16曲も入っていて、聴く前は失敗したかなとも思ったけれど、これは買って大正解だったです。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)