Daniel Sadownick(Conga,Per,Fretless-B)
Michael Karn(Ts)
Joe Magnarelli(Tp)
Rob Bargad(P)
Scott Colley(B)
Daniel Freedman(Ds)
David Binney(As),Keve Wilson(Oboe),Kenny Wollesen(Gongs,Cymbals),Morley(Vo)
Rec. 2008(?),NY (In Time Records 25172)

ダニエル・シャドウニックはそれほど有名ではないと思うけど、当ブログで検索するだけでも「Pat Martino/Remember」「Mark Elf/Liftoff」「Mark Soskin/17」「Alex Sipiagin/Out Of The Circle」「David Hazeltine/The Inspiration Suite」「Nicholas Payton/Into the Blue」(いずれも別頁あり)とサイド参加のアルバムがごろごろ引っかかる。本人のサイトを見ると、他にもマイケル・ブレッカー、スパイロジャイラ、クリスチャン・マクブライド、デニス・チェンバース、ドナルド・ブラウン、デビッド・フュージンスキー、メルビン・ライン、スティーブ・ウィルソン、デヴィッド・ビニー、デイブ・ストライカー、ケヴィン・ヘイズ等、4ビートジャズからフュージョンに至るまで実に数多くのアルバムに参加していて、これはもう現在最も忙しいコンガ&パーカッション奏者の一人といってもいいだろう。ミュージシャンの間では、サウンドにひとひねり欲しい時なんかはシャドウニックに参加してもらうという図式がすでに出来上がっているのかもしれない。
本作が満を持しての初リーダー作。サイド参加作品では縁の下の力持ち的な存在だけど、はたしてリーダー作ではどれだけハジケているのかが楽しみ。メンバーはクリスクロス・レーベルの人たちが中心となっているが、ピアノのボブ・バーガドだけは、もしかするとわたし的には聴くのは今回が初めてかもしれない。あとドラムスのダニエル・フリードマンも初めてかと思ったけれど、検索したら「Avishai Cohen/After The Big Rain(別頁あり)」で叩いていた。

シャドウニックのオリジナルが7曲と「Softly as in a Morning Sunrise」他で全9曲。
多重録音によるパーカッションのソロからスタートする。アフリカ的なリズムに3-2クラーベのアフロ・キューバンなリズムを合体させているのが斬新。途中からはオーケストラ・ヒット的な音が飛び出してくるいまどき(といってもちょっと古いけど)のサウンドに変化するのだが、取り立てて派手なパフォーマンスをしているわけでもなく、あくまでも一人アンサンブルを重視している。2曲目はコロッと変わって「朝日のように~」をモーダルな味付けで演奏している。ここでもクラーベのリズムがよく効いているね。リズミカルでノリのいいピアノのアドリブの後には4ビートにチェンジしたりして、なかなかカッコいいアレンジに仕上がっている。マイケル・カーンとジョー・マグナレリのアドリブも素敵。3曲目はグイグイ前に進む感じのシャッフル調の4ビート。シャドウニックは4ビート曲をコンガで演奏するときの定番リズム「ウン・パン・ウン・トト」を刻んでいるのだが、このなんの変哲もないシンプルさが逆に実に気持ちいい。4曲目はゆったりとした幻想的な曲。テーマ部分のオーボエが効果的。中間部ではスコット・コリーがなかなかいい感じのソロをとっている。5曲目は多重録音のパーカッションとエレベ(シャドウニックが弾いているのだが、かなりジャコ的でカッコいいね)とピアノ(こちらはハンコックぽい)による演奏。こういう曲では華麗なコンガ・ソロなんかも聴いてみたいところだが、どうやらシャドウニックはそういう派手なタイプの人ではないようで、楽曲はあっけなくフェイドアウトする。6曲目の4ビート曲(3拍子)ではデヴィッド・ビニーが登場。この1曲だけの参加ということもあり優しい曲調でありながらもなかなかリキの入ったプレイをしている。バーガドはアドリブでマッコイ的なアプローチを見せているけれど、曲調に応じていかようにもスタイルを変えることができるようで、この人はなかなか芸達者だね。最後の方のパーカッション・ソロでは「タンタ・ンタタ・ンタン・タンン」にリズムが変化。こういうちょっとしたアイデアが素晴らしい。7曲目は「カツ・カツ」したビート。ホーン抜きのピアノトリオ+1演奏となっている。後半部分にはコンガ・ソロがあるけれど、やはりそれほど派手ではないね。8曲目はミディアム・テンポの4ビート。カーンのコルトレーン・ライク、というかブレッカー風なテナー・ソロがカッコいい。ラストの9曲目では多重録音のパーカッションをバックに女性ボーカリスト(こちらもコーラスを重ね録りしている)が歌っている。
決してハデハデ系ではないもののなかなか小粋なサウンドで、私としてはけっこう好きなんだけど、ただ録音に関してはちょっとエコー成分が多いかなって感じ。パーカッションの音を引き立てるためにはこれぐらいでちょうどいいのかもしれないが、エコー成分のおかげでピアノはオフ気味に聞こえるし、スコット・コリーのベースの音も彼らしからぬ加工臭の強い音で録れているので、リアル・ジャズの音とは程遠いものがある。でもこのサウンドにはよく合っているとは思うけどね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)