Sylvain Beuf(Ts,Ss)
Jean-Michel Pilc(P)
Thomas Bramerie(B)
Andre Ceccarelli(Ds)
Louis Cesar Ewande(Djembe),Oumon Kouyate,Maryam Diabate(Vo)7
Dee Dee Bridgewater(Vo),Denis Leloup(Tb),Bernard Arcadio(P),Remy Vignolo(B)10
Rec. September 25-28&30,1995,Paris (Verve POCJ9358)

前から聴いてみたかったアンドレ・チェカレリの旧盤を入手した。
本作がレコーディングされた1995年当時は、私はまだチェカレリにはそれほど深い思い入れがなくて、せいぜいが「Bireli Lagrene/Standeards(93年)」を聴いてピーター・アースキン的な切れ味のいいドラマーだなあと好感を抱いていたぐらい。だいたいにしてフランスのジャズメン自体、ミッシェル・ペトルチアーニ以外はほとんど興味を持っていなかったからなぁ。そんなチェカレリが昔よく聴いていた「Bunny Brunel/Touch(別頁あり)」のドラマーだったのに気づいたのも、記事をアップした2006年になってから。また本作に参加しているジャン・ミシェル・ピルクの初体験は「Jean - Michel Pilc/Together Vol.1(00年)」だし、トーマス・ブラメリー(本作のライナーではトマ・ブラメリと表記されている)を知ったのも、ピルク絡みのここ何作かの諸作品やチェカレリの「Carte Blanche(04年)」なのでまだ数年しか経っていない。シルヴァン・ブフ(ライナーではバフ)も同様で、つまり本作がリリースされた当時は全然そそられないメンバーだったというわけですな。でもそれはどうやら私だけではなかったようで、国内盤である本作の帯を見てもD.D.ブリッジウォーターのゲスト参加を売りにしている(1曲しか歌ってないのに)だけで終わっている。

全10曲がメンバーのオリジナル。
1曲目はアップテンポの4ビート。ブレッカー・ライクなブフのテナーがとにかくカッコいい。またピルクもハンコックがぶち切れたときのように思いっきりアウトしまくっていて凄いったらありゃしない(バッキングも尋常ではない)。二人とも当時はまだ無名だったと思うけど、そんな彼らを起用したチェカレリにはよっぽど先見の明があったのだろう。さすがにフランスのファーストコール・ドラマーとして数多くの有名ミュージシャンと競演してきただけあって、確かな眼力を持っているね。本作の録音の時点でチェカレリは50歳(音楽生活35年)だそうだが、ドラミング自体は今とそんなに変わりないような感じ。逆にいえば年を取っても相変わらずパワフルで手数の多い現在のチェカレリが凄いということになるね。というわけで1曲目からして完全にノックアウトされるのだが、それは2曲目も同様。イントロ部分のピルクが不協和音的なハーモニーを用いていることからして、やはり彼はモンクからもそうとう影響を受けているようだ。あるいはセシル・テイラーのようにもっと自由度が高かったりして、とにかくやっていることは現在とほとんど変わっていない。楽曲的にはモーダルで不気味な曲調がなんともカッコいい。3曲目のアフロ調の6/8拍子曲ではブフがソプラノに持ち替えて、音質的にはクールではありながらも情熱的なアドリブを取っている。ブラメリーのソロも上々だし、ソプラノのリフをバックにしたピルクのアドリブも非常にスリリング。4曲目は急速調の4ビート。アグレッシブ極まりない演奏には思いっきり引きこまれてしまい、もう当記事をぐだぐだ書いている場合ではないなと思っていたら、曲があっけなく終わってしまった(苦笑)。
でも文章が長くなりそうなので以下の曲はやっぱり省略するけれど、もろアフリカ的な7曲目やD.D.ブリッジウォーターが歌っている10曲目も含めてどの曲をとっても私のツボにバッチリと嵌っていて、もうなにも文句のつけようがないね。本作のメンバーからピアノがアントニオ・ファラオに代わっただけの最新作の「Andre Ceccarelli /Live Sunside Session(別頁あり)」と比較しても甲乙付け難い演奏内容となっていて、これが13年前の作品だなんてさすがにチェカレリは凄い人ですな。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)